明年の御命題、そして布教所開設めざして

―喜びも悲しみも体験を資糧(かて)に―
(『大白法』H26.3.16)

 1991(平成3)年の「学会問題」後に新たに法人を設立し、今年で17周年を迎えるチリ共和国の日蓮正宗信徒は、御命題の信徒数50パーセント増はもちろんのこと、布教所の開設と御僧侶の常駐をめざして勇猛精進している。
 今回取材したテレサ・イバニェスさんは、たいへんな苦難を堅固な信心で克服した経験を、信行倍増の原動力、折伏成就の資糧としてきた方である。それはまさに大聖人様の、
 「苦楽ともに思ひ合はせて、南無妙法蓮華経とうちとな(唱)へゐ(居)させ給へ」(御書P991)
との御教示を実践する姿に他ならない。現在、テレサさんはその信仰体験をもとに多くの方を折伏して大きな成果をあげている。2012(平成24)年にチリで開催された第3回南米スペイン語圏総会には、たった1人で33人もの新来者をお連れした。
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自己紹介を兼ねて、入信したきっかけをお聞かせください。
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〈テレサ〉私はテレサ・イバニェスといいます。この仏法と巡り合って30年になります。
 それ以前は、キリスト教カトリックを信仰していました。当時の私は苦しみに支配され、それが自分の運命だと信じていました。
 1979(昭和54)年に長女・アレハンドラが生まれましたが、生まれながらにダウン症を患(わずら)っていました。その時代のチリの国情はそのような子を持つ家庭に対する社会保障制度が確立しておらず、私は働いたお金をすべて彼女の医療費に充(あ)てざるを得ませんでした。
 そうして4年が経過したとき、1人の友人から折伏を受けました。その友人は、神こそ救いを与えてくれると信じて疑わなかった私に、忍耐強く大聖人様の仏法のすばらしさを教えてくれました。
 それ以来、毎日少しずつ、しかし確かな信をもって唱題を始めました。すると私は安らぎを得られるようになり、さらに投薬が必要なくなるほど娘の病状が改善しました。それは本当に大きな功徳でした。
 そこで、すぐに日蓮正宗に改宗する決意をし、私と夫、そして2人の子供の家族4人で御授戒を受け、御本尊を御下付戴きました。

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入信をされて以後、様々な体験をされてきたと思いますが、特に重要な体験はありましたか?
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〈テレサ〉入信して本当に様々な喜び、悲しみの体験をさせていただきました。そのどれもが、なぜ私たちが苦しみを持つのか、それをどのように乗り越えて前進していけるのか、そして日々の仏道惨行を通して目標を達成していくことの大切さを、私に教えてくれるものでした。
 特に2002(平成14)年に叶った人生で最初の登山において、本門戒壇の大御本尊様を間近に拝すことのできた体験は、言葉では言い表わすことができません。私は必ず2人の子供を連れて総本山に戻ってくることを誓いました。そして、2009年に再び登山が叶いました。
 しかしその時に一緒に登山できたのは、長女のアレハンドラだけでした。なぜなら、2005年3月12日、長男は彼の妻と娘を残し、交通事故で亡くなっていたからです。
 それは私にとってとてつもなく悲しい出来事でしたが、今では、長男は仏教徒の親を持つことができ幸せ者だと思えるようになりました。長男は、初七日から四十九日、百箇日、毎月の御経日と彼岸会、盂蘭盆会、そして毎年の命日、それらすべての折に塔婆供養を受けた最初のチリ人となったからです。
 私は長男の境界は幸福であると確信しています。そして彼の幸福な境界は、私に安らぎを与え、そうして私は今現在広宣流布のために力を尽くすことができています。
 それは彼の妻と娘も同じです。息子の生前、私と嫁との間には大きな隔たりがあり、嫁は私や息子が日蓮正宗の信仰をしていることを嫌っていました。しかし息子が亡くなった後、塔婆供養によって彼の追善回向を行っている私の姿を目(ま)の当たりにしてきた彼女の気持ちに、変化が表われました。
 そして2012年2月、大聖人様御誕生会の日に、私の自宅で行われた地区座談会に彼女が参加した折、彼女は私に御授戒を受けるにはどうすればよいのかと尋ねてきました。私はあれほど私や息子が日蓮正宗の信仰をしていることを嫌っていた嫁が入信を決意したことに、驚きと感激でいっぱいになりました。
 同年5月、チリで行われた第3回南米スペイン語圏総会において、彼女は私の孫である彼女の娘と共に御授戒を受け、晴れて日蓮正宗の信徒となることができたのです。
 現在彼女は、私の孫と共に、私の住むサンティアゴより千2百キロ離れた場所で生活していますが、遠く離れて暮らしていても、私と彼女は本当の親子のような関係を築けています。

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最後に、今後の決意をお聞かせください。
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〈テレサ〉これまで何度もくじけそうになりましたが、そんな時、『開目抄』の、
 「我並びに我が弟子、諸難ありとも疑ふ心なくば、自然(じねん)に仏界にいたるべし。天の加護なき事を疑はざれ。現世の安穏ならざる事をなげかざれ。我が弟子に朝夕教へしかども、疑ひををこして皆すてけん。つたな(拙)き者のならひは、約束せし事をまことの時はわするゝなるべし」(御書P574)
の御文を常に奉戴し、戒めとしてきました。これまで戴いてきた数々の功徳は、大聖人様の教え、御法主上人猊下の御指南、そして御本尊様のお陰であると、心より感謝申し上げています。
 その御恩に報いるためにも、今年、必ずチリの信徒数50パーセント増を達成するため、全力を尽くしていきたいと決意します。