ルノワール絵画疑惑


 三菱商事が平成元年3月、東京都内の画商からルノワールの「浴後の女」と「読書する女性」を購入。売り値は約21億円だったが、三菱商事は買い値を36億円と主張、差額約15億円が使途不明とされ、課税された。絵画は約1年後、創価学会系の東京富士美術館に41億円で売却された。
 ところが、都内の女性会社役員らが三菱商事と画商の取引前から、絵画を三菱商事経由で同美術館に売却することを計画し、計約12億円の仲介手数料を取った上、申告していなかったことが3年3月発覚。三菱商事と画商の取引に創価学会の副会長が同席したことも分かった。
 女性会社役員は脱税の疑いで東京地検に逮捕されるなどしたほか、三菱商事も警視庁に古物営業法違反で書類送検され、学会副会長も事情聴取された。(『佐賀新聞』H6.6.12)

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 「ルノワール疑惑」とは、'89(平成元)年3月28日、帝国ホテル「桂の間」で売買されたルノワールの油彩『浴後の女』、『読書する女』の取引にからむ使途不明金疑惑である。
 絵の買い手は三菱商事で、当初は2点をスイス在住のフランス人2人から36億円で買ったと申告していたが、'90年秋、東京国税局調査第1部が税務調査に入り、以下のことが判明した。
@2人のフランス人は実在しない
A三菱商事は実際は創価学会から代理購入を頼まれ、東京・青山の画商「アート・フランス」から21億2千5百万円で購入
B翌'90年9月、創価学会の持ち物である東京富士美術館(東京部八王子市、名誉館長・原田稔 創価学会会長)に41億円で売却。その結果、「桂の間」での取引価格に差額14億7千5百万円が生じ、一体誰が懐に入れたのかという疑惑が浮上した。
 国税庁調査第1部は特別調査班を投入し、カネの流れを徹底的に洗った結果、「桂の間」での取引に立ち合った人物を特定した。三菱商事デベロッパー事業部の部長代理、創価学会副会長・八尋ョ雄(やひろよりお)、東京富士美術館副館長・高倉達夫、売り主の画廊「アート・フランス」社長・石原優、取引を仲介した陶磁器店「立花」役員・立花玲子、干代田区の投資顧問会社社長・金子暁、豊島区の経営コンサルタント会社相談役・宮田宗信、新宿区の建設会社元役員・森一也の各氏、計8人であった(肩書等はすべて当時)。
 三菱商事はこの時、三菱銀行が振り出した額面1億円の預金小切手36枚(36億円)を仲介役の1人である金子暁に手渡した。絵の買い手探しは、まず、石原に発している。石原が立花玲子に「絵の買い手がいないか」と声を掛け、彼女が森に頼み、森が金子につなぎ、金子が宮田に、学会員である宮田が最終的に創価学会という買い手を紹介した構図である。
 金子暁は小切手36枚のうち、7枚を抜き、残り29枚を立花に渡した。全36億円の配分は絵の売り手である石原が25億円、立花が2億3千万円、金子が2億3千5百万円、宮田が2億3千5百万円、森が1億円であることはハッキリしたが、立花が受け取った29枚のうち3枚、3億円の行方が摑(つか)めなかった。東京国税局査察部は'93年4月に立花らを東京地検特捜部に告発し、同特捜部は5月27日、立花を法人税法違反容疑で逮捕した。
 つまり'90〜'93年にかけて、創価学会の周りで、ルノワール絵画の取引にまつわる疑惑がくすぶり続けていたと言える。
 '91年7月には警視庁も乗り出し、八尋ョ雄 副会長を事情聴取。'92年9月には「ルノワールの絵画取引は創価学会の裏ガネ作りを目的としたもの。行方不明の3億円は八尋副会長に渡り、池田氏のノーべル平和賞取りの工作資金だった」旨の内容を語る立花玲子の告白テープの存在が、メディアに取り上げられた。
 同じ頃、「創価学会名誉会長池田大作殿」宛ての立花玲子の手による「念書」も写真付きで報じられた。〈絵画取り引きについての真相一切を口外しないことを約束致します〉〈和解金として平成4年9月10日に一部として2億円、残り8億円は10日以内に支払われることとの約束致しました〉などと奇妙な記述ではあるが、とにかく行方不明の3億円は根深く池田氏絡みという噂は消えなかった。(『フライデーH22.12.10』)