長寿医療制度に有権者反発
―民主・平岡氏が当選…衆院山口2区補選―
(『読売新聞』H20.4.28抜粋)
告示日の15日に年金からの保険料天引きが始まった後期高齢者医療制度(長寿医療制度)に対する批判が選挙結果に反映したとみられ、民主党は制度を廃止する法案を近く参院に提出する方針だ。(中略)
選挙戦で民主党は後期高齢者医療制度、暫定税率、年金記録漏れ問題を取り上げ、政府・与党を批判し、支持を広げた。無党派層に加え、候補者擁立を見送った共産党支持層や、自民党支持層の一部も平岡氏に投票したとみられる。
一方、自民党は業界団体や企業、国会議員の後援会などの支持を固め、公明党とその支持組織の創価学会も集票に努めたが及ばなかった。(後略)
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「自民党支持層の一部も平岡氏に投票した」というのに、創価学会員は"異体同心の団結"で自民党候補に投票したようです(笑)。彼等は「長寿医療制度」に賛成なのでしょうか。(法蔵)
一方、公明党やその支持母体の創価学会にとっても、補選の敗北は深刻なダメージとなった。後期高齢者医療制度の導入が支持層の反発を浴びる中、公明党は太田昭宏代表、浜四津敏子代表代行ら党幹部が相次いで選挙区入りしただけに、敗北はショックを一層大きくしている。
「補選では、公明党さんにお世話になった。お礼を申し上げる」。28日午後、国会内で開かれた政府・与党協議会。自民党の伊吹文明幹事長と町村信孝官房長官は、公明党の北側一雄幹事長に低姿勢で謝意を伝えた。ただ、同席した公明党の白浜一良参院議員会長は「後期高齢者医療制度の説明が十分でなかった」と不満をぶつけた。
創価学会幹部は「庶民の気持ちが分からない政権とのイメージが定着してきた。このままでは衆院選で与党は敗北する」と危機感を募らせている。(『毎日新聞』東京朝刊H20.4.29)
後期高齢者医療制度 “導入戦犯”は自民・公明
―'06年国会 渦巻く抗議の中−
(『しんぶん赤旗』H20.4.20)
75歳以上を差別する後期高齢者医療制度に「だれがこんな制度をつくったのか」と怒りの声があがっています。制度の“導入戦犯”は、自民、公明の与党です。お年寄りの「医療費削減」を目標にした法案をつくりあげ、強行したのです。
75歳以上の全員からの保険料徴収、保険料は年金から天引き、保険料滞納者からは保険証を取り上げ、資格証明書を発行、年齢で差別する医療内容…。後期高齢者医療制度で行われるこれらの政策はすべて、2006年6月に成立した医療改悪法に基づくものです。
【反対の声無視】
改悪法には2年間の準備期間を設け、08年4月から後期高齢者医療制度を実施することを盛り込みました。自民、公明は、自治体首長、医師会関係者らが「国民の健康、医療格差を拡大する計画だ」と反対する声を押し切って強行したのです。
医療改悪法が衆院で審議入りしてわずか1ヵ月余の06年5月17日の衆院厚生労働委員会。国会前には医療関係者や患者など約350人が座り込み、委員会室にも数十人が傍聴席につめかけていました。そうしたなか与党は「社会保障制度が充実していると過度な期待を国民に抱かせてはならない」(自民・北川知克議員)、「審議も機が熟してきた。ぜひ法案の処理を進めるべきだ」(公明・福島豊議員)と主張し、審議を一方的に打ち切って強行採決しました。
【推進役を誇示】
参院の審議も十分尽くされませんでした。野党の追及で問題が次々明らかになってきたのに、06年6月13日の参院厚労委で山下英利委員長(自民)が野党議員の厳しい抗議のなか、突然審議の打ち切りを宣言。与党は「必要不可欠な改革だ」(自民・中村博彦議員)と述べ、可決したのです。「後期高齢者医療制度は医療費の適正化のためにつくられた制度。75歳以上の医療は“みとり”の医療だ」(自民・西島英利議員、同年5月23日の参院厚労委)というのが理由です。医療改悪法が成立した翌日の『公明新聞』(06年6月15日)は「『国民皆保険』の信頼守る」「公明党の主張を随所に反映」と同党が“推進役”になったことを誇示しました。
自民、公明が医療改悪法に基づいて実施した後期高齢者医療制度は、橋本内閣時代から政府・与党で検討されてきたもの(別表)。弱肉強食の「構造改革」の推進を掲げた小泉内閣以降、「改革試案」「政府・与党大綱」、法案として具体化が進められました。
昨年の参院選後、与党は保険料の一部凍結などを行いましたが、それも制度を「円滑に施行するため」(与党合意)のもの。制度そのものを中止するつもりはありません。まさに、自民、公明こそ後期高齢者医療制度を導入し、推進した張本人です。
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【差別医療追及し反対】
―共産党―
日本共産党は06年の国会で、後期高齢者医療制度が高齢者を差別する医療であることを批判する論戦を展開しました。
衆院厚労委では、高橋千鶴子議員が健保の扶養家族から保険料を徴収する問題や、滞納者への資格証発行問題を徹底的に追及しました。
参院厚労委では、小池晃議員が、制度が「保険料引き上げか、給付の抑制か」を迫る「うば捨て山」制度であることを暴露。診療報酬を75歳で差別することの問題や、運営主体となる広域連合の運営が非民主的になる危険性を追及し、法案に反対しました。
法律成立後は、具体化を許さないための論戦や、運動を幅広い団体と協力しながら展開。今年2月には民主党、社民党、国民新党とともに廃止法案を衆院に提出しました。
[画像]:後期高齢者医療制度をめぐる主な流れ
―医療制度改革法が成立―
(<asahi.com>WS060614)
高齢者を中心とする患者の窓口負担増や、新たな高齢者医療制度の創設を柱とする医療制度改革関連法は、14日午前の参院本会議で自民、公明の与党などの賛成多数で可決、成立した。患者負担引き上げに加え、長期入院患者の療養病床削減、生活習慣病予防など、高齢化で増え続ける医療費の抑制を強く打ち出した内容で、今年10月から順次実施される。
10月には患者の負担増が始まる。70歳以上で一定所得以上の人の窓口負担は現在の2割から、働く世代と同じ3割に。療養病床に入院しているお年寄りの食費・居住費が全額自己負担になるほか、70歳未満の人も含め医療費の自己負担の月額上限が引き上げられる。
75歳以上の全員が加入する高齢者医療制度は08年4月スタート。これに合わせて一般的な所得の70〜74歳の窓口負担が1割から2割に上がる。75歳以上は1割のままだが、全国平均で月6200円程度と見込まれる新保険制度の保険料を払わなければならなくなる。
現在、全国に約38万床ある療養病床は12年度初めまでに15万床に削減。減らす23万床分は老人保健施設や有料老人ホーム、在宅療養などに移行させる。生活習慣病予防は中長期的な抑制策の軸で、40歳以上の全員を対象にした健康診断・保健指導を健康保険組合などの保険者に義務づける。
地方に抑制の責任を担わせるのも特徴。都道府県ごとに平均入院日数の短縮など数値目標を盛り込んだ医療費適正化計画を作らせる。中小企業の会社員ら約3600万人が加入する政府管掌健康保険の運営は、国から公法人の「全国健康保険協会」に移管。都道府県の支部ごとに保険料率を決めるようになる。
厚生労働省はこれらの施策で2025年の医療給付費を、現行のままの場合の56兆円から48兆円程度に抑えられるとしている。
国会審議では、野党側が患者負担増について「高齢者の家計は大きな打撃を受ける。行き過ぎた受診抑制を招く」と批判。療養病床削減には与党からも、行き場のない高齢者が出かねないと心配する声があがった。
このため参院厚生労働委員会での採決では、低所得者への配慮や、療養病床再編に対する支援策の充実などを盛り込んだ付帯決議がつけられたが、どこまで実効性があるかは未知数だ。
[画像]:身近な医療 こう変わる
公約よりも連立維持を優先
<世論も自民党も反対>
●4月からサラリーマンの医療費自己負担を3割に引き上げる問題をめぐり、4日の自民党総務会で負担軽減策を求める声などが相次いだ。 野呂田芳成・元防衛長官は「国民が困っていることをよく理解すべきだ。予算が通った後で再検討し、(負担軽減策を)補正予算でやればいい」と主張。野中広務・元幹事長は「統一地方選に大きな影響が出る」と指摘し、大島慶久参院議員も「国民生活を直撃し、自民党の政策として納得できない」と述べた。(『讀賣新聞』WSH15.3.4)
●4月からサラリーマンの医療費自己負担が2割から3割に引き上げられる問題について、今回の世論調査で国民意識を探ったところ、「引き上げを凍結し議論し直すべきだ」との回答が39%、「反対」が30%に上り、合わせて7割近い人が引き上げに否定的なことが分かった。「賛成」の9%と、「決まったことだから仕方がない」の17%を合わせた容認派は、26%に過ぎなかった。(『毎日新聞ニュース速報』H15.3.3抜粋)
<公約反故の常習犯は今回も/解散怖くて態度一変>
●神崎代表は(※02年2月)6日の記者会見で、引き上げ実施時期について「政府管掌健康保険の財政問題と景気の動向を両方見ながら判断すべきだ」と述べ、「(※平成)15年4月」の実施にこだわるべきでないとの姿勢を示していた。 しかし、首相が7日夜発した「だめなら考えるところがある」という解散を示唆するような発言は、同党執行部の態度を一変させた。(『産経新聞』H14.2.13)
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6日には「政府管掌健康保険の財政問題と景気の動向を両方見ながら判断すべきだ」と述べていた人が、翌日には態度を一変させたというのですから、いかに公明党の言動がイイカゲンであるかが分かります。
●2001年の参院選でも、全国保険医団体連合会のアンケートに「3割負担には反対」と答えるなど、再三にわたり負担増反対を公約してきたのです。(『しんぶん赤旗』H15.2.23)
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“制度を維持するために負担増が不可欠”という公明党の言い分は、自分たちの過去の主張にてらしてもなりたたないものであると同時に、国民への公約も踏みにじるものです。
●98年の参院選では「医療費の負担増に反対」と公約し、公共事業の見直しなど「徹底したムダ削減で年間10兆円程度の財源確保は十分に可能」(法定ビラ)と主張。(『しんぶん赤旗』H15.2.23)
●97年に当時の小泉純一郎厚相(現首相)が、健保3割負担案を盛り込んだ「21世紀の医療保険制度」を発表したとき、いま3割負担を推進する公明党はこう反対していました。「お金が今までよりかかるからといって病院にいくのを手控えるようになれば、早期治療、早期快癒が可能だったものが重症になるまで放置されてしまうということにもなりかねず、かえって医療費の増大を招くことにもなりかねません」(『公明新聞』H9.8.18/『しんぶん赤旗』H15.3.3)
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公明党はかつて、負担増が重症化と医療費の増大を招くことを認めていたのです。この医療費の増大分による支出と、保険料の負担増による収入の関係についての考察はなされていないようです。
<公約よりも権力維持>
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「野党は引き上げ凍結法案を提出したが、目先の負担を回避するより、抜本改革を急ぎ、医療制度の効率化を徹底すべきだ」「診療報酬のマイナス改定や高齢者の患者負担増に伴い、医療費が減少しているのも事実だが、凍結すれば後で赤字が増える。(中略)小手先の甘い幻想をふりまくより、改革を断行して医療制度を安定させることが政治と行政の責任だ」(『産経新聞』16日付社説から抜粋)(『公明新聞』H15.2.21)
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●サラリーマンの医療費自己負担を2割から3割に引き上げる問題をめぐって、昨秋に続いて展開された抵抗勢力と小泉純一郎首相の攻防「第2ラウンド」は、「平成15年4月実施」を関連法案に書き込むことで政府・与党が合意し、小泉首相の勝利に終わった。自民党厚生関係議員らが強く反発する中で、自民党執行部や公明党が合意に動いたのは、支持率急落で退路を断たれた小泉首相が「ダメなら解散」ともとれる強い姿勢をとったためだ。(『産経新聞』H14.2.13)
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一般紙の主張を紹介して、3割負担を正当化していますが、その同じ新聞が3割負担に同意した公明党の国民無視の「動機」を暴露していたのです!
●「政党の組み合わせ」など、実はさして重要ではなく、政党のチマチマした動きを報じれば報じるほど、むしろ政党離れが進んでいく。有権者の意識の中では、「ともかく政治を変えたい」と、もっと大きな地殻変動が起きているのでは(『毎日新聞ニュース速報』H15.3.4)
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自公連立維持を最優先させて、過去の約束を簡単に反故にする。このような公明党の動きこそ政党離れの原因である。
<全体主義的体質で「異体同心」>
●地方議会で出された凍結決議に、公明党は毅然として対応しており、公明党だけが推進しているように批判を受けている(冬柴幹事長『NHKニュース速報』H15.3.3)
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地方議員の「造反」にも「毅然として対応」する公明党。
●(※2002年2月)7日夕、自民党幹部の1人は、衆院本会議場で公明党の神崎武法代表とひそかに接触、医療費自己負担引き上げに慎重な坂口力厚生労働相が辞任に踏み切ることのないよう協力を求めた。 これに先立ち、与党内には「坂口厚労相が辞意を漏らした」という情報が流れていた。坂口厚労相が辞任する事態になれば小泉政権、与党3党体制の崩壊につながりかねない。(中略)坂口氏は公明党執行部によって説得された。(『産経新聞』H14.2.13)
<「歯止め」をかけたと自慢するが・・・>
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公明党はサラリーマン本人への3割負担導入を容認しましたが、「公的保険における患者負担は3割までが限界」との認識に立ち、将来的に患者負担がさらに引き上げられることがないよう、「患者負担は将来とも3割を維持する」ことを健康保険法に明記させました。(『公明新聞』H15.2.21)
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●1984年に健保本人負担(経過措置で1割導入、97年から2割に)を導入したときに、「国保が高すぎる」という声に押されて、政府は国保を2割負担に下げて健保と「公平化」を図ることを国会で約束していました。 当時、自民党・橋本龍太郎衆院議員(のちに首相)が「国民健康保険の被保険者の給付割合を8割とするよう必要な措置を講ずる」という2割負担に下げる「修正案」を国会に提案(84年7月12日)。同案が可決され、健保法付則に書き込まれました。「3割にならえ」でなく、国保を「2割に引き下げる」ことが国民への公約なのです。(『しんぶん赤旗』H15.3.3)
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以前にも「健保法付則」に「2割負担に下げる」ことを明記しながら、実施されなかったのです。今回の公明党の「『患者負担は将来とも3割を維持する』ことを健康保険法に明記させました。」という主張(自慢)が、如何にイイカゲンであるかが分かります。
<世界に誇れる?>
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日本では、国民皆保険は当然と思われていますが、世界的に見ると決して多くありません。米国では、公的な医療保障は高齢者・障害者と低所得者のみで、現役世代は民間保険に任意で加入します。このため、全人口の約16%(4400万人)が無保険者です。まさに国民皆保険は、日本が世界に誇る“国民の安心の基盤”です。(『公明新聞』H15.2.21)
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●もともと国・地方の税収に占める社会保障の支出は、サミット7ヵ国で日本が1番少ない率(22%)です(7日の衆院予算委員会での志位和夫委員長質問)。他の国は3割、4割、5割、6割になるところもあります。イタリア並みに1割上げれば、増税なしに社会保障を8兆円増やせます。(『しんぶん赤旗』H15.3.3)
<財源確保はムダ削減だったハズ>
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・3割負担を見送ると、03年4月からの保険料の引き上げ幅をさらに拡大しなくてはなりません。
・民主、自由、共産、社民の4野党が2月12日に提出した3割凍結法案では、施行に要する経費は400億円となっていますが、別途、必要な3400億円の財源をどう手当てするかは明らかにしていません。(『公明新聞』H15.2.21)
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●98年の参院選では「医療費の負担増に反対」と公約し、公共事業の見直しなど「徹底したムダ削減で年間10兆円程度の財源確保は十分に可能」(法定ビラ)と主張。(『しんぶん赤旗』H15.2.23)
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自公内閣では「徹底したムダ削減」はできなかったのでしょうか?
■医療制度改革医療費抑制の仕組み示せ
(『毎日新聞』H15.3.30社説)
高齢化が急テンポで進む。このままでは5年後には医療保険財政がパンクする。危機的状況を脱するための医療制度の改革は、どんな方向に進むのか。
政府は28日の閣議で、医療保険制度改革の基本方針を決定した。基本方針では、75歳以上の高齢者向けの独立した新保険制度の創設を打ち出した。また、国保と被用者保険については都道府県単位を軸に再編・統合する。
しかし、肝心の医療費抑制の抜本改革について方向性が見えてこない。財政試算すら示さずに基本方針と言えるのか。改革に向けた政府の強い意思が感じられないのは、不満である。
現在の老人保健制度の医療費は、自己負担を除けば、3割を公費、7割をサラリーマンらの被用者健保や自営業者らの国保など各医療保険の仕送りで賄っている。
年間医療費の伸び1兆円のうち、9割が高齢者の医療費だ。高齢者医療費に対する仕送りによって、赤字組合が増加している。
新保険では、医療費の5割を公費で負担し、残る5割を保険料と仕送りで賄う。保険料の水準や運営団体などは今後の検討課題としているが、現在はサラリーマンの被扶養者となっている高齢者に新たな負担を求めることには反発も予想される。
65〜74歳の高齢者は、国保を被用者保険が財政支援する仕組みを作る。国保は高齢者が多く財政負担が大きいからだ。国保は被用者保険の支援なしには運営できないが、被用者側がどの程度の負担をするのか、合理的な説明が必要だ。
各保険の再編・統合も容易ではない。都道府県単位とはいっても、基本方針はその具体的な規模や手順を明示していない。スケールメリットを生かせば財政安定化の道も生まれるが、地域の実情に応じたきめ細かな再編・統合が必要である。
今回の基本方針は、昨年12月に厚生労働省がまとめた試案がたたき台となっている。試案では各団体間の年齢構成の違いで生じた保険料負担の格差をならす「年齢・所得調整方式」と75歳以上の「独立保険方式」の2案を提示した。基本方針はその「折衷型」だ。
折衷型の基本方針となったのは国保や被用者保険の各団体、日本医師会など関係団体の利害調整の難しさを示している。
だが、国民医療費は年間約30兆円に達する。20年後には80兆円近くに膨れ上がるという。
危機にある国民皆保険を維持するためには思い切った改革が不可欠だ。早急に医療費抑制の仕組みを示すべきである。
改革は08年度の実現を目指すという。基本方針からは見えてこない抜本改革を今後、どう作り上げていくのか。負担増が予想される公費の財源をどこに求めるのか。検討課題は山積している。
4月から患者負担が3割に引き上げられる。国民に負担が重くのしかかる。「給付の平等・負担の公平」の理念を実現するには、今後の議論を国民1人ひとりが厳しく見つめることが必要だ。(『毎日新聞』03-29-23:17)
■将来の姿が見えない医療改革案
(『日経新聞』H15.3.29社説)
小泉純一郎内閣における医療制度抜本改革の第1弾の内容が大筋で固まった。高齢者医療制度の創設、医療保険の再編・統合などが柱になっている。政府・与党は今後さらに改革案づくりを進めていくことにしているが、その前に必要な「日本の医療をどのような姿にするのか」というビジョンが見えてこない。
医療改革を巡っては2001年度から具体的な論議が始まった。しかし経済財政諮問会議や総合規制改革会議といった首相直属の諮問会議と、厚生労働省・自民党の間で意見対立があり、結局2002年度には患者負担増や保険料の引き上げ、それに診療報酬の引き下げという当面の財政対策だけに終わった。
そこで政府・与党が改めて協議し2003年度以降、順次改革を進めていくことになった。その第1弾が(1)医療保険制度の統合・再編(2)診療報酬体系の見直し(3)高齢者医療制度の創設――の3点である。これらについては2002年度末までに基本方針を策定するとなっていた。4月から患者負担が3割に引き上げられるために、その前に抜本改革の姿勢を示しておくという意味もある。
焦点の高齢者医療制度では、75歳以上の後期高齢者を対象とした新たな制度をつくるとしている。そこにかかる医療費は公費と各健康保険制度からの支援のほか、高齢者からも保険料を徴収する。また65歳以上の前期高齢者に関しても新たな枠組みをつくる。医療保険の統合・再編では、国民健保の広域化や、政府管掌健保を都道府県単位に運営するなどの方向を示している。ただ高齢者医療制度の創設とともに、実現は2008年度を目標としているためその具体的な姿を詰めるのはこれからの課題となる。
今回の改革案に続いて今後も「社会保険病院のあり方の見直し」「社会保険庁の業務の効率化」などの改革を進めていくことになっている。そうした個別のテーマでの改善も必要だろうが、医療に関して最も重要で、国民が知りたいのは「どのような患者本位の医療体制を築くか」であり、そのために「どのような財政的な仕組みが必要か」という点であるはずだ。その明確な姿を示した上で、そのための具体策を詰めていくのが本当の抜本改革ではないのか。
厚生労働省から今回の改革案の説明を受けた自民党議員の中には「改革の理念を示せ」と迫った人もいたという。理念を示すのはむしろ政治の役割であろう。官僚と政治の役割を明確にしない限り、抜本改革などできるはずがない。
■医療3割凍結に反対する公明党
―97年には改悪反対の意見書運動/全国の地方議会で―
(『しんぶん赤旗』H15.3.17)
全国の地方議会で、健康保険本人3割負担の実施凍結・延期などを求める決議、意見書に、公明党だけが反対する事態が相次いでいます。深刻な経済危機のなか、国民への負担増押しつけで突出する公明党の姿は、地方議会での同党のかつての立場からみても異常です。
1997年に橋本内閣が、健保本人2割負担を導入する医療改悪法を強行・実施したときには、公明(新進党合流後の参院・地方議員中心の組織)は、地方議会で「医療保険制度改悪に反対」などの「意見書提出運動」にとりくんでいました。
この運動は、同党が「地域から国を動かす改革のうねりを起こしていく」(前島伸次郎議会局長『公明新聞』97年8月27日付)と位置づけたものでした。そのなかで、「医療保険改悪に反対」は、次のような内容となっていました。
「サラリーマン本人3割負担、大病院では5割負担などと、またもや政府は国民への大幅な負担増を狙っています。政府が画策している改悪案は『抜本改正案とは名ばかりで、単なる国民の負担増が中心』で、速やかに同案を撤回し、国民の英知を集めた改革案を再検討するよう求めていくものです」(『公明新聞』同年9月8日付)
公明党が97年3月、9月と2度にわたって「医療保険制度の改悪に反対する意見書(案)」を提出した富山市議会の例をみると―。
同党は、厚生省(当時)が公表した健保本人3割負担を盛り込んだ「医療保険制度の改悪案」について、「医療費の負担増をすべて患者や被用者に押し付けるとともに、政府管掌保険への国庫負担の削除を予定するなど、医療に対する公的責任を放棄している」と批判。「『地獄の沙汰(さた)も金次第』への医療に道を開く内容になっている」として撤回を求めていました(9月議会に提出した意見書案)。
ところが、今年3月の同市定例議会で公明党は、日本共産党や各団体から出された健保本人3割負担の実施凍結を求める意見書案、請願に、議会運営委員会の段階でことごとく反対し、自ら「地獄の沙汰も金次第」への医療に道を開く先頭に立っています。
埼玉県議会では、97年6月に採択された「医療保険制度の抜本的改革促進を求める意見書」と、99年12月に採択された「医療・福祉の充実を求める意見書」で、公明党は賛成するだけでなく、他会派とともに共同提出者となっていました。99年採択の意見書では、健保本人2割負担導入を批判したうえ、「今後更なる負担増は行わないこと」などを求めていたのです。
ところが、今年3月7日には、埼玉県医師会などが提出した、健保本人3割負担の実施凍結などを求める請願について、公明党だけが「3割負担反対だけを叫ぶことは無責任のそしりを免れない」(福永信之議員)として反対したのです。
公明党の冬柴鉄三幹事長は「(3割負担を)公明党だけが熱心に推進しているのではないかという批判を受けている」と自民党に泣きつきました。しかし、議会での態度表明やかつて自ら推進した決議・意見書にもそむいて悪政を推進する道理のなさを示すだけです
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※「3割負担反対だけを叫ぶことは無責任」(H15.3.7公明党・福永信之議員)というが、まさにその「無責任」な主張をとってきたのが、公明党だったのです。かつての言動に対する反省もないままに、与党になった途端に主張を反転させる。「コウモリ政党」の面目躍如たるところです。公明党は「状況が変われば主張も変わる」と言っているようですが、「『抜本改正案とは名ばかりで、単なる国民の負担増が中心』で、速やかに同案を撤回し、国民の英知を集めた改革案を再検討するよう求めていくものです」(『公明新聞』970908)という過去の自分たちの政府批判に、どのように反論できるのでしょうか?また、2002年2月6日には「政府管掌健康保険の財政問題と景気の動向を両方見ながら判断すべきだ」と述べていた人が、翌日には態度を一変させたというのですから、いかに公明党の言動がイイカゲンであるかが分かります。(法蔵)
●神崎代表は(※02年2月)6日の記者会見で、引き上げ実施時期について「政府管掌健康保険の財政問題と景気の動向を両方見ながら判断すべきだ」と述べ、「(※平成)15年4月」の実施にこだわるべきでないとの姿勢を示していた。 しかし、首相が7日夜発した「だめなら考えるところがある」という解散を示唆するような発言は、同党執行部の態度を一変させた。(『産経新聞』H14.2.13)
■医療費3割負担凍結を/公明党だけ反対
(『しんぶん赤旗』H15.3.7)
<秋田県・反対は公明党だけ>
秋田県議会は6日、「医療費3割自己負担の実施凍結を求める意見書」を賛成多数で可決しました。
県医師会と県歯科医師会からそれぞれ提出されていた3割自己負担の実施凍結を求める請願2件も、公明党だけが反対し、賛成多数で可決されました。
<三重・桑名市も>
三重県桑名市議会は5日、「健保本人3割負担の凍結を求める意見書」を賛成多数で可決しました。日本共産党議員団(3人)をはじめ各会派が共同で提案したもの。公明党の2議員だけが反対しました。
<神奈川・湯河原町も>
神奈川県湯河原町議会は6日、健康保険本人3割負担増の凍結を国に求める意見書を、日本共産党を含む賛成多数で可決しました。県内では、初めての採択で、これには2人の公明党議員だけが退席しました。
意見書では、「健保3割負担と保険料の引き上げは、受診抑制や治療中断を引き起こすのみならず、家計への負担増やリストラによる転職で国保加入者が大幅に増大し、国保財政の悪化が懸念されます」として、国に対して「健保3割負担増について凍結されるよう強く要望」しています。
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(『しんぶん赤旗』H15.3.12)
<青森県も>
青森県議会は10日、健保本人3割負担実施の凍結や高齢者自己負担の軽減などを求める「医療制度改革に関する意見書」を可決しました。公明党をのぞく、日本共産党や社民党・農県民連合、自民党、政風会、無所属の47議員が共同で提出。採決では公明党議員2人が退席、出席議員の全員賛成で可決しました。公明党県議の1人は、地元紙に退席の理由を聞かれて「医療制度を存続していくために引き上げは必要」(11日付「東奥日報」)だと答えました。意見書は、政府が「聖域なき構造改革」の名で進めている医療制度改革について、「国民に新たな負担増を求めており、このような改革では世界各国から高い評価を受けている『国民皆保険制度』が崩壊し、国民の生命・身体・健康を維持することはできない」と指摘しています。
■<世論調査>医療費3割負担7割が否定的
(『毎日新聞ニュース速報』H15.3.3抜粋)
4月からサラリーマンの医療費自己負担が2割から3割に引き上げられる問題について、今回の世論調査で国民意識を探ったところ、「引き上げを凍結し議論し直すべきだ」との回答が39%、「反対」が30%に上り、合わせて7割近い人が引き上げに否定的なことが分かった。「賛成」の9%と、「決まったことだから仕方がない」の17%を合わせた容認派は、26%に過ぎなかった。
支持政党別で見ると、自民党支持層でも63%が否定派。民主党支持層は77%、無党派層は71%が否定派だった。また反対と答えた人の42%は内閣不支持に回った。
年齢別では、働き盛りである30代の74%が引き上げ否定派で、各世代を通じてその割合が最も高かった。
医療費自己負担の引き上げについては、患者減を危惧(きぐ)する日本医師会や、その支援を受けた自民党厚生族が4月の統一地方選をにらんで問題を蒸し返す動きに出ている。引き上げ時期が統一選と重なることから、否定派が多数を占めた調査結果は選挙にも影を落とすとみられる。
■医療費3割負担“凍結で保険制度破たん”と自公は脅すが/なりたたないこれだけの理由
(『しんぶん赤旗』H15.3.3)
サラリーマン、退職者の医療費自己負担を4月から3割にして1.5倍にする政府・与党の負担増計画にたいして、実施凍結を求める世論と運動が広がっています。これに対し小泉首相や自民・公明連合は「凍結したら医療保険財政が破たんする」「医療費が払えなくなる」と国民を脅し、凍結の動きを抑えつけようと躍起です。
<強行すれば重症化で財政を悪化>
政府・与党は値上げの理由として「国民皆保険制度を維持しなければならない」などといいます。しかし、高い保険料を払ったうえに、医療費を3割も自己負担するのでは、保険制度への信頼をみずから崩すものです。
医療費の値上げは、何よりも必要な受診を抑制して、治療を中断させ、国民の健康の悪化につながります。
1997年に健保本人の自己負担が2割に引き上げられたために、病気の自覚症状がある人のうちの13%、280万人が医療を受けず、がまんを余儀なくされる事態が生まれました。これが3割負担になったら、さらに深刻な受診抑制が広がることは明らかです。
必要な治療を抑えたり、中止することは、病気の「早期発見・早期治療」を困難にします。ぎりぎりまでがまんして、病気が重くなってから医療にかかることになれば、かえって保険財政を悪化させます。
自己負担限度額を超える高額になった場合、その分は全額保険から給付されるという高額療養費の制度があります。つまり、病気が重症化した場合の対応措置です。
2割負担の政府管掌健康保険(中小企業の労働者が加入)でこの高額療養費を使っている人は、百人あたり約3件。これに対し、3割負担の国民健康保険(自営業者が加入)では、高齢者分を除いても百人あたり約18件で、ほぼ6倍にもなっています。3割負担が重く、医者にかかれないことの影響が表れています。負担増で重症化し保険からの支払いが増えれば、制度は「持続可能」どころか「持続不可能」となります。
<なぜ赤字か 失政と国の責任放棄>
今日の医療保険財政の赤字をつくっている原因、その責任はどこにあるのでしょうか。
−リストラで加入減/賃下げで収入も減−
まず、長引く経済の低迷のもとで、保険財政を支える労働者の賃金が下がり、リストラで加入者が減り、収入が減っていることが原因です。
政管健保では1998年度から01年度まで4年連続で加入者が減少し、2千4万人から千956万人に約48万人減っています。賃金も下がっているため、加入者が支払う保険料算定の基準となる平均標準報酬月額は99年度から3年連続で後退し、29万800円が28万9千100円に約千700円下がりました。その分だけ保険料収入が減少しました。(社会保険庁の政管健保01年度収支決算から)
一方、加入者1人当たりの医療費支出は、ピークだった96年度と01年度を比べると、約2万円減っています(21万2千円が19万2千円に、同)。
このように政管健保の赤字は、医療費が増えているからではなく、小泉内閣の「不良債権早期最終処理」方針のもとで不況が加速し中小企業の倒産、失業が増大して賃金が低下していることが最大の原因です。大企業の労働者が加入する組合健保でも共通した傾向です。
健保3割負担実施は、個人消費をさらに後退させて不況に拍車をかけ、一時的には保険料収入が増えても、結局、健保財政をさらに悪化させるものです。
−国庫補助を減らす−
保険財政の赤字のもう1つの原因は、医療保険への国庫補助をどんどん減らしてきたことです。(グラフ1)
[画像NO.1]:グラフ1=医療への国庫負担の割合
1992年に政管健保の黒字を理由に、国庫補助率を16・4%から13%に3・4%引き下げました。当時、厚生省幹部はこれを「当分の間の暫定措置」「万一財政状況が悪化した場合の措置については、必要に応じて国庫補助の復元について検討させていただく」(92年3月10日衆院厚生委員会、黒木武弘事務次官)とのべ、「復元」を約束していました。
その直後、バブルが崩壊し政管健保は赤字になりましたが、政府は約束を破り元に戻しませんでした。その結果、02年度までの11年間の累計でみると、約1兆6千億円もの国庫補助が削られてきたのです。
<国保2割こそ公約>
小泉首相は「国保はすでに3割、それにあわせる」といって健保3割負担を合理化しています。しかし、1984年に健保本人負担(経過措置で1割導入、97年から2割に)を導入したときに、「国保が高すぎる」という声に押されて、政府は国保を2割負担に下げて健保と「公平化」を図ることを国会で約束していました。
当時、自民党・橋本龍太郎衆院議員(のちに首相)が「国民健康保険の被保険者の給付割合を8割とするよう必要な措置を講ずる」という2割負担に下げる「修正案」を国会に提案(84年7月12日)。同案が可決され、健保法付則に書き込まれました。
「3割にならえ」でなく、国保を「2割に引き下げる」ことが国民への公約なのです。
<いま、なにが必要なのか/国庫補助を元に戻す/高薬価を引き下げる>
こうした医療保険財政の赤字の原因、責任をみるならどう対応すべきかは明らかです。
まず、13%に引き下げられた政管健保の国庫補助率を約束通り元の16.4%に戻し、国の責任を果たすことです(03年度分で約千400億円戻る)。さらに92年以来削減してきた国庫補助1兆6千億円を計画的に保険財政に組み入れれば、政府がいう「財政悪化分」を埋め合わせてもおつりがきます。
もともと国・地方の税収に占める社会保障の支出は、サミット7ヵ国で日本が1番少ない率(22%)です(7日の衆院予算委員会での志位和夫委員長質問)。他の国は3割、4割、5割、6割になるところもあります(グラフ2)。イタリア並みに1割上げれば、増税なしに社会保障を8兆円増やせます。
[画像NO.2]:グラフ2
国・地方で公共事業に45兆円から50兆円つぎこみながら、社会保障は貧しいという逆立ちを転換し、サミット諸国並みに社会保障に振り向ければ、財源は十分に生み出せます。
さらに医療内部の改革として、日本の高医療費の原因になっている薬剤費を欧米諸国並みに引き下げることです。薬剤費はアメリカの2倍から3倍です。大手製薬メーカーに大もうけさせている高薬価の構造に本格的なメスを入れるべきです。
<公明も認めていた>
1997年に当時の小泉純一郎厚相(現首相)が、健保3割負担案を盛り込んだ「21世紀の医療保険制度」を発表したとき、いま3割負担を推進する公明党はこう反対していました。
「お金が今までよりかかるからといって病院にいくのを手控えるようになれば、早期治療、早期快癒が可能だったものが重症になるまで放置されてしまうということにもなりかねず、かえって医療費の増大を招くことにもなりかねません」(『公明新聞』97年8月18日付「党員講座」)
負担増が重症化と「医療費の増大を招く」ことを認めていたのです。
■公明党だけが推進!?
(『NHKニュース速報』H15.3.3抜粋)
協議会(※政府与党協議会)では、サラリーマン本人の医療費の自己負担を3割に引き上げることについて、公明党の冬柴幹事長が、「地方議会で出された凍結決議に、公明党は毅然として対応しており、公明党だけが推進しているように批判を受けている」と述べた他、保守新党の二階幹事長も、「政府・与党で合意したことであり、これは尊重しなければならない」と述べました。
これに対して福田官房長官は、政府広報などを通じて、引き上げに理解を求める努力をしていく考えを示しました。[2003-03-03-16:11]
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(『讀賣新聞』WSH15.3.4)
4月からサラリーマンの医療費自己負担を3割に引き上げる問題をめぐり、4日の自民党総務会で負担軽減策を求める声などが相次いだ。
野呂田芳成・元防衛長官は「国民が困っていることをよく理解すべきだ。予算が通った後で再検討し、(負担軽減策を)補正予算でやればいい」と主張。野中広務・元幹事長は「統一地方選に大きな影響が出る」と指摘し、大島慶久参院議員も「国民生活を直撃し、自民党の政策として納得できない」と述べた。(2003/3/4/18:56)
■“医療費3割負担やめよ”高まる声
−公明党抑え込みに躍起−
(『しんぶん赤旗』H15.2.23)
サラリーマンなどの医療費自己負担を3割に引き上げる負担増の凍結を求める世論が高まるなか、改悪実施の先頭に立つ公明党が大あわてです。19日には神崎武法代表が、北海道議会で採択された「医療費3割自己負担の実施延期を求める意見書」に道議会の公明党が賛成したことに「遺憾」を表明。21日には、『公明新聞』の1面と2面を使って「なぜ3割負担が必要なのか」の弁解を大特集するなど、凍結要求の抑え込みに躍起です。
<北海道議会意見書めぐり公明党ドタバタ>
北海道議会の意見書は、道医師会の要望や、北海道労働組合総連合(道労連)、新日本婦人の会などの請願が出されるなか、日本共産党、自民、民主、公明各党など議会の6会派すべてが共同で提出し、14日に全会一致で可決されました。
意見書は、医療費自己負担の引き上げが「さらなる景気の冷え込みと給与所得者の生活を一層悪化させるとともに健康にも影響を与えかねない重大な問題」だと指摘し、3割負担の実施延期を国に求めています。(全文別項)
これについて公明党は、前日の13日には意見書の提出を了承していました。ところが14日の朝になると、党中央の影響で態度を一転させ、本会議が約2時間半も中断する事態となりました。
『北海道新聞』15日付「医療費めぐり公明ドタバタ」の記事によれば、「(14日朝)党本部の冬柴鉄三幹事長が、自民党の山崎拓幹事長を通じて自民党道議に『意見書に慎重な公明党に配慮してほしい』と働きかけた」ことで議論は振り出しにもどったものの、最終的には公明党が「『…負担増への反発が強い支持者の手前もある』と折れ、意見書は全会一致で可決された」というのです。
これに対して神崎代表は「党中央幹事会の方針に従わなかったのは遺憾だ」と発言したのです。
道議会の意見書と、それを抑えにかかった公明党と、いったいどちらに道理があるのか――答えは、この間の国会論戦などを通じても明らかです。
すでに昨年10月から負担増が実施された70歳以上のお年寄りの場合、大幅な負担増のために、在宅酸素療法の患者をはじめ治療が続けられなくなるなど、命を削る深刻な事態を引き起こしています。ぎりぎりになるまで病院に行くのを我慢することで病気の重症化を招き、医療費を増大させて保険財政の危機を加速させることにもなります。
また、不況のもとでの負担増押しつけは、家計にも打撃を与え、景気悪化で税収や保険料収入の落ち込みにもつながります。
負担増の押しつけは、医療保険の赤字の悪循環をまねき、かえって制度を「持続不可能」にするのです。
<“負担増は医療費増大招く”かつての主張どこへ?!>
公明党は、「国民皆保険制度を将来にわたって守るため」には負担増が避けられないと繰り返し強調。負担増の先送りは「医療保険財政をさらに悪化させ、より大きな負担増として国民にハネ返ってくる」などと、国民を脅して、実施凍結を求める声を抑え込もうと必死です。
しかし、いま負担増を強行すれば経済や国民の暮らしにどんな悪影響を与えるかという問題については、いっさい口をつぐんだままです。
3割負担を正当化する同党のあれこれの言い分は、これまでの同党自身の主張とも正反対のものです。
たとえば、1997年9月の健保本人2割負担導入の際、公明党は、「(負担増で)病院へ行くのを手控えるようになれば、…かえって医療費の増大を招くことにもなりかねません」(『公明新聞』97年8月18日付)と“警告”していました。
また、97年に当時の小泉純一郎厚相が3割負担導入などの負担増計画を発表したときには、「患者負担増はもう限界」(同8月16日付主張)、「『だれでも、どこでも』受診を可能とすることを基本としてきた国民皆保険の理念を自ら崩すことになる」(同8月26日付)と批判していました。(図)
98年の参院選では「医療費の負担増に反対」と公約し、公共事業の見直しなど「徹底したムダ削減で年間10兆円程度の財源確保は十分に可能」(法定ビラ)と主張。さらに2001年の参院選でも、全国保険医団体連合会のアンケートに「3割負担には反対」と答えるなど、再三にわたり負担増反対を公約してきたのです。
“制度を維持するために負担増が不可欠”という公明党の言い分は、自分たちの過去の主張にてらしてもなりたたないものであると同時に、国民への公約も踏みにじるものです。
自民党の悪政を必死に支え、推進するという点では、いまや“本家”自民党も顔負けの公明党。国民がどんなに苦しもうが、それほど政権にしがみつきたいのでしょうか。
<北海道議会が採択した医療費3割自己負担の実施延期を求める意見書>
給与所得者本人が医療機関の窓口で支払う医療費自己負担の割合が、本年4月から現行2割が3割へ引き上げられることとされている。
本道は、全国平均より速いスピードで高齢化が進んでおり、また非常に厳しい経済・雇用情勢にある中で、医療費自己負担額の引き上げは、さらなる景気の冷え込みと給与所得者の生活を一層悪化させるとともに健康にも影響を与えかねない重大な問題である。
もとより、高齢化社会にあって、医療保険制度の抜本改革が必要であることは言うまでもないが、診療報酬の改定や、昨年10月から実施されている高齢者の医療費自己負担の増により、政府管掌健康保険の収支見通しにおいても好転が見込まれるとの試算も出されていることなどを勘案すると、こうした一連の医療費制度改革の効果を見極める必要がある。
よって、国においては、健康保険の医療費3割自己負担の実施を延期するよう強く要請する。
以上、地方自治法第99条の規定により提出する。
■検証・医療制度改革の攻防
−首相「ダメなら解散」ちらつかせる 自公保体制死守へ合意に動いた与党−
(『産経新聞』H14.2.13抜粋)
サラリーマンの医療費自己負担を2割から3割に引き上げる問題をめぐって、昨秋に続いて展開された抵抗勢力と小泉純一郎首相の攻防「第2ラウンド」は、「平成15年4月実施」を関連法案に書き込むことで政府・与党が合意し、小泉首相の勝利に終わった。自民党厚生関係議員らが強く反発する中で、自民党執行部や公明党が合意に動いたのは、支持率急落で退路を断たれた小泉首相が「ダメなら解散」ともとれる強い姿勢をとったためだ。政界に緊張が走った今回の舞台裏を検証する。
【大臣辞任を避けろ】
≪坂口さんに早まらないでくださいと伝えてほしい≫
7日夕、自民党幹部の1人は、衆院本会議場で公明党の神崎武法代表とひそかに接触、医療費自己負担引き上げに慎重な坂口力厚生労働相が辞任に踏み切ることのないよう協力を求めた。
これに先立ち、与党内には「坂口厚労相が辞意を漏らした」という情報が流れていた。坂口厚労相が辞任する事態になれば小泉政権、与党3党体制の崩壊につながりかねない。何よりも自民党執行部が恐れたのはこのことだった。
≪12日からの衆院予算委員会前に合意した方がいい≫
8日午後の与党3党幹事長会談で、公明党の冬柴鉄三幹事長が自民党の山崎拓幹事長に連休中の決着を申し出た。12日からの衆院予算委員会で野党に攻められる形で政局の混乱に発展することは、与党3党体制を守ってきた公明党執行部として、何としても避けなければならなかった。
【相次ぐ説得】
≪「首相の決意は固い。もう時間がない」≫
8日夕、公明党の神崎武法代表は衆院第1議員会館2階の公明党議員応接室で、坂口力厚労相との直接会談に臨んだ。しかし、頑固で知られる坂口氏は、なかなか首を縦には振らなかった。
創価学会を支持母体とする公明党ではもともと、医療制度改革での国民負担引き上げに慎重な意見が強い。神崎代表は6日の記者会見で、引き上げ実施時期について「政府管掌健康保険の財政問題と景気の動向を両方見ながら判断すべきだ」と述べ、「15年4月」の実施にこだわるべきでないとの姿勢を示していた。
しかし、首相が7日夜発した「だめなら考えるところがある」という解散を示唆するような発言は、同党執行部の態度を一変させた。8日は神崎氏だけでなく、冬柴幹事長も坂口氏に会い、「こんなことで政局にしてはならない」と説得を続けた。
【これでまとまる】
坂口氏はそう言い残し、自室を後にしたが、抜本改革を条件にしても首相は4月引き上げを撤回しなかった。
自民党厚生関係議員は依然、反対姿勢を崩していない。だが、連携相手と頼んだ坂口氏は公明党執行部によって説得された。自民党執行部と首相を向こうに回してどこまで抵抗できるか。医療制度改革をめぐる対決は、関連法案の了承手続きをめぐる第3ラウンドに入った。
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※「創価学会を支持母体とする公明党ではもともと、医療制度改革での国民負担引き上げに慎重な意見が強い」という状況において、神崎代表自身、「政府管掌健康保険の財政問題と景気の動向を両方見ながら判断すべきだ」と述べていた。それにもかかわらず、与党3党体制を守るために医療費3割負担に同意した公明党。ここにも、学会=公明党の行動基準の優先順位「国民<会員<池田=権力欲の充足」がハッキリと表れているといえそうだ。(法蔵)