公明党「平和の党」はどこへ行く

(『西日本新聞』H27.9.21)

 「平和の党」はどこへ向かおうとしているのか。
 公明党のことだ。成立した安全保障関連法には連立与党の一角として賛成を貫いた。集団的自衛権の行使について、多くの憲法学者などが違憲であると指摘しているにもかかわらずだ。憲法9条擁護の立場を変えたのか。「自民党にブレーキをかけるはずだ」との期待もあっさり裏切った。
 公明党が平和の党を自任するのは、支持母体の創価学会の歴史に由来する。戦争で夫や恋人を失った女性たちが戦後、数多く入信した影響もあって、婦人部や青年部を中心に平和に対する関心が強まったとされる。
 また、戦時下で宗教統制が強化される中の1943年、前身の創価教育学会を設立した牧口常三郎は治安維持法違反と不敬罪の容疑で逮捕され、翌年、東京拘置所で死亡している。
 戦争の悲惨さや権力による弾圧にはひときわ敏感だったはずの公明党や創価学会だが、戦後70年で戦争の記憶とともに平和への関心も薄れてしまったのだろうか。
 公明党が自民党と連立を組んで間もなく16年になる。自民党からは「考え方に違和感はなくなった」との声まで聞こえる。政策でも選挙でも自公の一体化が進む。
 象徴的な光景があった。学会員で愛知県安城市の天野達志さん(51)は「党是に反する」として安保関連法案の白紙撤回を求める9千人以上の署名を独自に集め今月8日、公明党本部に提出しようとした。しかし、職員から電話で「警備員に渡しておいて」と告げられ、党本部前で4日間も立ち尽くしたという。
 天野さんは「残念ながら公明党は変質した」と肩を落とす。一方で、一枚岩とみられた組織からの異論は天野さんにとどまらない。創価大と創価女子短大には安保法制に反対する有志の会ができた。「結党の原点に戻ってほしい」との願いだろう。
 あくまで自公政権か、原点回帰か。安保法制は、公明党の難しい岐路も浮き彫りにしている。