公明が全国郵便局長会に接近

―票のためなら友党も出し抜く―
(『週刊文春』H24.3.15/<THIS WEEK>H24.3.8.12:02)

 民主党と国民新党の連立合意で、速やかに法案成立を目指すとしているのに、自民党の抵抗で膠着(こうちゃく)状態が続いていた「郵政民営化見直し問題」がようやく動き始めた。流れを変えたのは公明党。これまでは自民党との関係から静観してきたが、2月下旬に独自法案をまとめ、民主、自民両党に提示したのだ。
 民主党は大筋で受け入れる意向だが、自民党の賛同を得られない場合でも、公明党は今国会に法案を提出し、成立を目指す考えを打ち出した。
 公明党案は、郵貯、簡保を完全民営化する小泉内閣時代の郵政民営化法と、これに反対する国民新党が提出した「郵政改革法案」を足して2で割った内容。山口那津男代表は記者会見で「民自公3党の実務者協議の積み重ねを踏まえた内容だ。自民党内にもいろいろな考え方があるだろうが、郵政というシステムの機能劣化を放置しておいてはいけない」と強調した。
 公明党を味方につければ法案成立はほぼ確実。これをきっかけに自公関係がぎくしゃくすれば、念願の「民公連携」に道が開けるかもしれないと、民主党幹部はほくそ笑んだ。
 面白くないのは、民営化見直しの“看板”を奪われそうな国民新党。亀井静香代表は、「名を捨てて実を取る」と多くを語らないが、所属議員はあけすけに公明党を批判する。
 「公明は郵政票がほしいだけ。郵政事業の将来より、自分たちの次の選挙を心配している。自民党との選挙協力も壊したくないから、法案提出には協力するが、成立まで責任を持つつもりはないだろう」
 前回の衆院選で大敗した公明党が議席奪還に向け、郵政団体の選挙協力に期待しているのは事実。全国郵便局長会(柘植芳文会長)は国民新党を支持してきたが、民営化見直しが進まないことに不満は爆発寸前だという。
 局長会関係者が語る。
 「こちらは民営化を見直してほしい。向こうは票がほしい。完全なギブ&テイクです。柘植会長と公明党の井上義久幹事長や、関西方面議長を務める白浜一良参院議員会長との会談では、具体的な選挙区名も話題に出たと聞いている」
 公明党は昨年の大阪ダブル選挙で中立を保ったのに続き、大阪市議会での協力と引き換えに、次期衆院選で公明党候補の選挙区に大阪維新の会の候補者を立てない約束を橋下徹大阪市長から取り付けたとされる。選挙のためなら友党も出し抜く。執念のすさまじさは危機感の裏返しでもある。