新聞社は「創価学会」と「幸福の科学」なしに生きてゆけない

―いまや各社の大スポンサー―
(『週刊現代』H24.2.18)

【告収入が半減したから】
 「これまで新聞にとって、広告の大スポンサーだったのは自動車メーカーと電力会社でした。しかし、この不況と原発事故で、これらの広告は激滅。本来なら宗教関係の広告は避けたいんですが、背に腹は代えられません」(朝日新聞関係者)
(中略)
 本誌が今年1月と10年前の'02年1月の朝日・毎日・読売各紙に掲載された両宗教団体関連の広告本数を比較すると、創価学会関連は毎日が7→11、朝日は5→7、読売が5→10に。幸福の科学関連も10年前は各紙1回だけだったのが、各2、3、3回に増加。つまり、3日に1回以上は両団体関連の広告が目に飛び込んでくる計算になる。
 しかも、1ぺージの3分の1を使った「全5段広告」が、10年前は3紙合わせて両団体合計で5本だったのに、今年1月は15本の3倍増。掲載数の増加とともに、大きな広告が増えたのだから、余計に目立つ。
 新聞社の大きな収入の柱は販売収入(購読料)と広告収入だ。前者は'04年以降下がり続け、1位の読売は昨年1月〜6月平均の発行部数が1千万部を割った。朝日も10年前に比べると54万部、毎日も51万部滅らしている(日本ABC協会調べ)。広告収入に至っては日本新聞協会加盟社全体で9千億円超('00年)から約4千5百億円('10年)と、10年で半滅した。
 そんな苦境の新聞社にとって、創価学会や幸福の科学がいかに有り難いか。元毎日新聞常務で、ジャーナリストの河内孝氏が語る。
 「創価学会の池田大作名誉会長の著作などを紹介する広告は、全面広告やカラー印刷など料金の高いものが多く、基本的に値引きをしないので収益が高い。
 また、聖教新聞は印刷所を持たず、その印刷は首都圏では毎日系列の東日印刷の独壇場でしたが、近年は他の新聞社にも分散されています。地方紙も含め、印刷部門は聖教新聞など外部からの受注を増やしたいのが実情ですから、そのあたりが、税と社会保障の一体改革が国のテーマになっているのに、どの新聞も宗教法人への課税問題を取り上げないということにもつながっているように思います」
(中略)
 なお、冒頭で記したように、今年1月に朝日・毎日・読売に掲載された創価学会と幸福の科学関連広告を、各社の正規料金で換算すると、朝日が約9千8百万円、毎日が約1億7百万円、読売が約1億8百万円という推計になる(各紙とも本誌の取材に対して、個別の取引については公表しないという回答だった)。
 本来、新聞が特定の宗教団体と密接な関係を持つのはタブーである。本誌が新聞労連に、1月26日の創価学会広告について聞いたところ、まだ組織として対応していないと断りつつ、「『宗教団体の機関紙印刷受託や広告の出稿』が紙面に影響を与える危険性を持ち、新聞社経営が厳しさを増している中で、その危険性も増していることは否定できません」という率直な答えが返ってきた。
 しかし、産経新聞系列の夕刊フジが、'10年1月から月に1回、幸福の科学が立ち上げた幸福実現党幹部による「いざ!! 幸福維新」という連載を始めているように、紙面への影響はすでに出始めている。新宗教に詳しいジャーナリスト・藤倉善郎氏が言う。
 「夕刊フジは、昨年8月31日に、見開き2ぺージで『宇宙人インタビューに成功!?』という特集記事を掲載しました。中身はUFOの目撃情報やNASAの秘密情報を披露するといったものですが、その後に『宇宙人が地球に来た目的については幸福の科学の大川隆法総裁の書籍に書かれている』という内容が続きます。明らかに幸福の科学の宣伝ですが、どこにも『広告』とは書かれていない。私が産経新聞読者サービスに問い合わせたら『広告の要素もある特集記事』と回答し、それはおかしいと言うと『そうですね、これは広告ですね』と答えました」
 宇宙人インタビューと言われても、まともに相手にする人は少ないだろうが、読売や産経に出ている大川総裁の書籍広告にしても、金正恩の守護霊や金正日の霊が語った北朝鮮の真実といったもので大差はない。

【苦しいときの「神」頼み】
 次に、かつては毎日系列が独占状態だった聖教新聞の印刷だが、いまでは公称発行部数550万部(この数字は20年間変わっていない)のうち、毎日系列150万部前後、読売系列120万部前後、朝日系列10万部前後、残りを地方紙が請け負っているとされる。
 発行部数が減るなか、新聞を刷る輪転機の稼働率を上げたいのは各社同じ。特にこれ以上、他社に聖教新聞印刷のシェアを奪われたくない毎日新聞は必死だ。
 「昨年6月、関連会社を担当していた武田芳明・グループ戦略本部長を取締役東京本社副代表に昇格させ、同時に東日印刷も含めた関連会社の経営政策を練る『毎日新聞グループホールディングス』取締役執行役員グループ経営企画部長にも就かせた。武田さんは創価大学出身で創価学会取材も担当した元敏腕記者。社内では『他紙に聖教新聞の印刷を奪われないようにする布石か』と言われています」(毎日新聞関係者)
 本誌が朝日・毎日・読売各社に、創価学会や幸福の科学の広告、聖教新聞印刷によって筆が鈍る恐れはないか尋ねたところ、朝日は「取材・報道に影響することはありません」、毎日は「恐れはありません」と回答した(読売はこの質問への回答がなかった)。
 創価学会の1ぺージ広告が載った1月26日、各紙は「池田名誉会長が脱原発提言」という記事も掲載している。だが、一昨年5月以来、公に姿を見せず、体調不安説が流れる池田氏が、本当にそんな提言をしたのか検証した記事は皆無。
 「さすがに各社とも『池田氏がこう話した』とは書けず、池田名で提言を発表するという報じ方ですが、なぜそんな書き方になるかを説明すべきでしょう。創価学会の言うままに『池田氏が提言』と報じているようでは、学会の広報誌と受け取られても仕方ない」(元NHK記者で椙山女学園理事の川崎泰資氏)
 苦しいときの神頼みで信者が宗教に頼るならまだしも、経営が苦しいからと新聞社が宗教に頼る。これでは新聞離れが進むのも無理はない。