************************************************************ 今回ノ満洲事変ハ実ニ皇国ノ重大事ニシテ苟モ生ヲ我皇土ニ享ケ職ヲ我教ニ奉ジ教化ノ任ニ在ル者ハ宜シク其事態ヲ正視シテ大ニ自覚奮起スル所無カルベカラズ
惟フニ正義ニ立脚シテ東洋ノ平和ヲ確保シ信義ニ基キテ友誼ヲ隣邦ニ厚ウシ以テ共存共栄ノ福祉ヲ希フハ日本古来ノ精神タルノミサラズ又実ニ明治天皇ノ明示シ給ヘル皇国永遠ノ国是ニシテ我国策一トシテ此趣意ニ出デザル無キハ歴史ニ徴シテ明カナリ然ルニ隣邦我誠意ヲ覚ラズシテ無謀ノ言動多ク遂ニ今回ノ事態ヲ惹起スルニ至レリ而モソノ政府〔編者註―張学良政権〕ニ統一ノ威令無ク責務ヲ明カニスル能ハズシテ事態ハ益々紛糾セントス列国又我真意ヲ誤解シ且ツ満蒙ノ実情ニ通セズ国際聯盟ノ本旨ヲ没却シテ正論ヲ顧ミザラントスルモノアリ抑モ此事タル素隣邦ノ我誠意ヲ解セザルニ因ルト雖モソノ関スル所一隣邦トノ問題タルニ止ラズ実ニ対世界列国ノ問題ナリ將東洋永遠ノ平和ニ関スル大事タルノミナラズ又国際信義ノ死活世界平和ノ成否ヲ左右スル重大事ナリ此ヲ以テ之ヲ観レバ正ニ我国未曽有ノ難局ナリト謂フベシ
此秋ニ当リ常ニ信忠一本ノ教義ヲ体シテ教導ノ職ニ在ル者ハ須ク日夜不断ノ祈念ニ世道人心ノ指導ニ専念努力以テ教信徒ヲシテ国民タリ奉教者タルノ自覚ヲ促シ時局ニ処スベキ道ヲ誤ルコト無カラシメ終ニハ外邦ノ蒙ヲ啓キテ我正義貫徹シ眞ノ平和確立ヲ見ル日ノ一日モ速カナランコトヲ祈念セザルベカラズ
此祈念ニ基キ特ニ正義貫徹国威宣揚ノ祈願祭ヲ行ヒ或ハ在満ノ将士及同胞ノ慰問犒労ニ或ハ戦歿者犠牲者ノ慰霊祭ニ或ハ是等遺族ノ慰問救助ニ夫々誠意ヲ尽シテ遺漏無カランコトヲ期スベシ
右命ニ依リ此段通牒候也
昭和六年十一月十二日
金光教本部 教監 山本 豊
金光教各教会長殿
************************************************************ 一二監第三五号
今次、蘆溝橋ニ於ケル、支那兵ノ不法行為ニ端ヲ発シタル北支事変(編者−日中戦争初期の名称)ハ、其ノ当初ヨリ、局地解決ヲ希望シテ、隠忍自重、百方之カ拡大ヲ妨止シ、誠意折衝、切ニ隣邦ノ反省ヲ促サムトシタル帝国ノ努力ハ、何等酬ヒラルル所ナキノミナラス、却ツテ其ノ非ヲ覆ヒ、其ノ罪ヲ嫁シ、事実ヲ歪曲シテ列国ニ讒構シ、慘忍倨傲、暴状到ラサルナク、而モ陰ニ軍隊ヲ集中シ、防備ヲ厳ニシ、挑戦以テ武力抵抗ノ挙ニ出テムトスル、隣邦ノ態度ニ因リテ、事態ハ今ヤ全ク危殆ニ瀕スルニ至レリ。
惟フニ、東亜ノ和平ヲ永遠ニ確保シテ、隣比其ノ幸ヲ同シクシ、国際ノ正義ヲ不断ニ尊重シテ、列国其ノ福ヲ一ニセムトスルハ、我カ列聖ノ宏謨ニシテ、亦、帝国不動ノ国是タリ、明治以来、帝国ノ干戈ヲ動シタル、一再ニ止ラサリシ所以ノモノモ、職トシテ此ニ存シタルリシナリ。然ルニ、今ヤ隣邦、帝国ノ誠意ヲ蹂躙シ、両国ノ福祉ヲ阻害シテ、自ラ愧ツル所ナシ。帝国政府ノ、決然起チテ、断乎、其ノ不信ヲ膺懲シ、其ノ無道ヲ排撃セムトスル、亦、眞ニ已ムヲ得サル所、時局之ヨリ重大ナルハ無ク、挙国一致、以テ此ノ難局ニ処シ、上下団結、以テ其ノ所信ヲ貫徹シテ、迷昧ヲ啓発シ、国威ヲ顕揚スヘキナリ。
我カ教祖、夙ニ信忠一本ノ教義ヲ樹テ、滅私奉公ノ教風ヲ布キ給ヘリ、斯ノ教義ヲ信奉シ、斯ノ教風ニ薫化セラルヽ本教徒ハ、今ヤ当ニ、平生実修セル所ノモノヲ実証スヘキ秋ナリ。全教、宜シク時局ヲ正確ニ認識シ、不撓ノ活力ヲ、一教依立ノ源泉ニ仰キ、別示要項ニ準拠シ、
所属ノ教師信徒ヲ督励シテ、祈念ニ教導ニ、丹誠ヲ新ニシ、機ニ応シ宜シキヲ制シテ、
率先挺進、銃後ノ事ニ従ヒ、虔ミテ無極ノ神徳皇恩ニ答ヘ奉リ、上ハ以テ教祖立教ノ神意ヲ暢達シ、下ハ以テ教徒護国ノ本分ヲ全ウセムコトヲ期スヘキナリ。
右依命通牒候也
昭和十二年七月二十日
金光教本部 教 監 高橋 正雄
金光教各教区支部部長殿
金光教満洲布教管理所所長殿
金光教台湾事務所担当殿
金光教各教会長殿
要 項
一、現下国家非常ノ時局ニ際会シ本教ハ教祖立教ノ本旨ニ則リ事態ノ推移ニ伴ヒ左ノ各項ニ準拠シ必要ニ応シテ何時ニテモ御国ノ御用ニ奉シ得ルノ用意ヲ常ニ整フヘシ
一、先ず教師信徒一同所属教会所結界御取次ノ下ニ『我身は我身ならず皆神と皇上との身とおもひ知れよ』『信心してまめで家業を努めよ君の為なり國の為なり』トノ信念ヲ一層明確ニ確立センコトヲ要ス
一、教会所ハ本来信心修行ノ道場ナリ サレハ結界奉仕ノ御取次ヲ中心トシテ祭典説教御理解及青年会婦人会健児団等ノ集会ソノ他教会所ニ於ケル一切ノ行事ニヨリテ吾等ハ神ト倶ニアリトノ信念ノ下ニ国民トシテ私ヲ去リテ邦家ニ殉スヘキ原動力ヲ絶エス此処ニ仰キ得ルノ機能ヲ発揮シテ遺憾ナカラン事ヲ期スヘシ
一、各教会所ハ以上ノ要旨ヲ具体的ニ実現シテ
(イ)御取次奉仕者ハ教祖立教ノ本旨ニ則リ大教会所神前奉仕ニ神習ヒ御祈念御取次ニ専心一意タルヘキコト
(ロ)教師ハ一身一家ヲ挙ケテ御取次ヲ仰キソノ生活凡テ神任セトシ起居一切ニ本教本来ノ教風ヲ具現シ以テ信者ノ模範タルヘキコト
(ハ)信者ハ御取次ヲ仰キ教師ノ指導ニ従ヒ求道ノ歩ヲ進メツヽ家業ニ従事シ以テ各自ノ生活ソノマヽヲ『我身は我身ならず』トノ自覚ノ下ニ『君の為なり國の為なり』トノ本義ノ現ハルヽヤウ勤ムヘキコト
(ニ)総代役員ハ信徒ノ先達トシテソノ信念ヲ進メツヽ教会所諸般ノ用務ニ当リ以テ内外ノ雑事ノ為ニカリニモ御取次ノ御事ニ支障ヲ来スヤウノコトナカラシメ奉ルコト
(ホ)青年会婦人会健児団等ハ教会長ノ指導ノ下ニ団体トシテ本教的活動ヲナシ各々ソノ独特ノ機能ヲ発揮シ地方公共ノ事業ニハ身ヲ挺シテ参加スルコト
(ヘ)朝夕時刻ヲ定メ教師信徒教会所ニ参集シ特ニ
国威ノ宣揚武運ノ長久ヲ祈念スルト共ニ各自ノ意気ヲ揃ヘ所信ヲ一ニシテ以テ以上各項ノ実現ニ努ムルコト
一、特ニ応召将兵及ソノ家族ノ慰問等ハ只一時ノ儀礼的措置ニ流ルヽコトナク感謝ノ誠意ヲ籠メテ絶エス親身ノ実意ヲ尽シ真ニ力強サヲ感セシムル様務ムルコト
一、斯クテ本教信奉者ハ各自ソノ所属ノ教会所ヲ通シ全教ヲ挙ケテ国家ノ急ニ奉シ苟モ一身一家ノ利害ニ捉ハルルコト無キヲ期スヘシ
〈以下2項目の事項は省略〉
************************************************************ 一六事第五号
昭和十六年十二月八日
金光教事変対処事務局長
金光教各事変事務部長殿
金光教各教会主管者及教師殿
本日畏クモ宣戦ノ大詔ヲ渙発アラセラレ候義寔ニ恐懼措ク能ハザル所ニ有之候予テ今日アルヲ覚悟罷在候我等今ヤ愈々平素ノ信心ニ基キ管長諭告ノ趣意ヲ体シテ勇躍国難ニ赴キ毅然トシテ戦時国民生活ノ確保ニ精進スベキノ一途アルノミニ有之候就テハ全教一体同信相率ヰテ特ニ左記事項ノ実践ニ孜メ以テ聖旨ニ奉答センコトヲ期セラレ度此段通牒候也
記 一、各教会ニ於テハ朝夕「戦勝一斉祈願」ヲ行ヒ又特ニ日ヲ定メテ「戦勝祈願祭」ヲ執行シ皇国ノ必勝ヲ熱願スルコト
一、政府当局ノ指示ニ絶対随順シ苟ニモ流言蜚語ニ惑ハサレザルコト
一、各自ノ職場ヲ死守スルノ覚悟ヲ以テ職域奉公ノ実ヲ現ハシ生産拡充国力増進ニ邁進スルコト
一、生活ヲ最低限度ニ切下ゲ物資ヲ節約シテ国債購入及貯蓄ニ全力ヲ注グコト
一、各重要地区ニ於テハ特ニ防護活動及救護事業ニ挺身奉仕スルコト
以上