「池田不在」で減り続ける得票数(仮題)
(<現代ビジネス>『週刊現代』H25.7.26編集)
「創価王国」—。そうとしか言いようのない空間が、東京・新宿区のJR信濃町駅周辺に広がっている。何棟もの創価学会の教団施設がそびえ、赤・黄・青の三色旗を掲げた土産物店が軒を並べる。(中略)
そんな「創価王国」の中心で、急ピッチで建設が進んでいる建物がある。「創価学会総本部」だ。鉄骨鉄筋コンクリート造で、地上7階、地下3階、敷地面積4814㎡、建物の延べ面積1万8769㎡。学会が東京都に提出した建築計画概要書によると、主要用途は「礼拝所」となっている。文字通り、学会の中枢となる"総本山"である。
(中略)
この「総本部」は、当初の構想を大幅に縮小したものだという。創価学会関係者が明かす。
「もともと池田名誉会長は、かつて創価学会が総本山として信仰の対象としていた静岡県富士宮市にある日蓮正宗大石寺のような"聖地"を作りたかったのです。日蓮正宗と蜜月だったときは、大石寺登山が、学会員の一大イベントでしたから。そこで、池田名誉会長が目指したのは、信濃町全体のテーマパーク化です。当初の構想にあったのは、本部から200mほど離れたところにある池田名誉会長の旧自宅も合わせて開発し、道路も拡大して、一大宗教施設を作ることでした。ところが、本部に隣接した土地の地主がどうしても土地買収に応じず、計画は頓挫した。その結果、総本部は中途半端なものになってしまいました」
この関係者によると、本部を総本山化する理由は、「学会員をコンスタントに集めないと、宗教的求心力が弱まるから」だという。
【池田不在で求心力低下】
求心力低下の背景には何があるのか。最大の原因は池田名誉会長が、'10年5月以来、公の場に姿を現さないことにある。ジャーナリストの段勲氏が言う。
「これだけ池田氏の姿が見えないと、機関紙の聖教新聞がいくら『池田先生は元気だ』と書いても、学会員も『本当だろうか』と、疑いの目で見てしまう。参院選を控え、これでは学会員の意気が上がらない。学会側は、『いまこそ立ち上がれ』といった内容の池田氏の檄文なるものを学会員にどんどん配って、引き締めに躍起になっています」
先の東京都議選直後、学会職員に紹介された「池田名誉会長の伝言」と題されたメモにはこうある。
〈歴史に輝きわたる完勝おめでとう。(中略)日本中、世界中の同志が大勝利の万歳をしています。(中略)「勝って兜の緒を締めよ」。いま再び強盛に祈り、もう一度われらの鉄の団結を固めて、仲良く勝ち進もう。全同志にくれぐれもよろしくお伝えください〉
都議選についての具体的な言及はなく、一般的な内容のように映る。これを読んだ現役の学会員が言う。
「伝言は何も言っていないに等しい。実は池田名誉会長は、思ったよりも体調が思わしくなく、自ら学会や公明党の指揮を取れるような状態ではないそうです。池田名誉会長のお言葉も執行部が過去の発言をなぞって出しているだけではないでしょうか」(中略)
しかし、学会側は御年85歳の池田氏の体調は良好だと強調している。『文藝春秋』の今年1月号には池田大作夫人の香峯子さんが登場し、「(主人は)ラジオ体操を若い人たちと一緒にするのが、今も日課となっています」と述べている。また、6月30日付の聖教新聞は、池田氏が創価大学(東京・八王子市)を訪れたと報じた。
そうであるなら、学会員の前に姿を現すことぐらいできそうなものだが、会員と触れ合う様子を報じる写真は公開されていない。
【会員の不安高まり、選挙にも影響】
そのため、ますます一般の学会員の不安が高まり、学会側はその不安をなだめるのに躍起になっているという。その1つの手段が、参拝者の管理だ。
「現在、参拝に訪れた人は所属組織の名前を書いたうえで、指紋認証を行ってから入館するようにしています。池田名誉会長をひと目に触れさせないようにする学会職員らの態度に不満をもった学会員が何をしでかすかわからないから、厳重に警備をしているんです。実際、館内で暴力行為に及んだ学会員もいます」(前出・現役学会員)
本誌記者も礼拝施設に入る婦人が、機械の上に手をかざしているのを目撃した。身内のはずの学会員まで警戒しなければならないほど、学会内部が揺れているのは事実のようだ。
それを如実に示すのが、公明党の得票数だろう。今回の東京都議選で公明党は全員当選を果たしたが、得票数自体は前回より10万票減らした。グラフを見るとわかるように、得票数は'05年をピークに下がり続けている。背景を宗教学者の島田裕巳氏が分析する。
「国政選挙や都議選で公明党の票数が少なくなっているのは、実際に選挙活動を積極的にする学会員が、かなり減っているからでしょう。その大きな原因は、やはり池田大作氏が表に出なくなったこと。学会員にとっては池田氏と直接会って励まされたという体験が重要なんです。彼が全国を回って学会員と対面してきたのが大きい。それができなくなって求心力の源がなくなってしまった」
池田氏個人のカリスマ性が、学会員を引きつける大きな原動力だった創価学会。その池田氏の事実上の不在で、今後どうなるのか。(中略)
もし11月18日の落成式にも池田大作氏が姿を現さないとしたら……そのとき創価学会に激震が走ることになるかもしれない。
※途中の見出しは法蔵で編集
[資料]:減り続ける得票数