40年以上前に自公による保守独裁を予見した藤原弘達氏の卓越した慧眼

(佐高信『サンデー毎日』H25.12.22)

 前略 公明党殿
 与党と野党の間にユ党があると言われてきましたが、公明党はまさにそれですね。ユは癒着のユでもあるでしょう。まさか、公明党が自民党と一緒になって特定秘密保護法案を成立させようと躍起になるとは思いませんでした。与党ボケしたとしか言いようがありません。
 1998年秋、私は盗聴法反対の集会で公明党代表代行(当時)の浜四津敏子さんと同席しました。
 そのとき彼女は、ナチスドイツの支配下、秘密警察が次第に取り締まりの対象を広げ、反戦平和運動や環境保護運動にまでその手をのばしたことなどを引いて、通信傍受法という名の盗聴法に反対する姿勢を明確にしたのです。
 ところが、公明党が与党入りするや、コロリと態度を変えて、集会にも出てこなくなりました。
 それで、久米宏さんがキャスターの「ニュースステーション」では、
♪あなたはもう 忘れたかしら
という「神田川」の歌い出しにかぶせて、浜四津さんの反対発言を再放送しコメントを求められた私は、
 「彼女の発言には賞味期限があり、半年も経たずにそれは過ぎてしまったということか」
と皮肉りました。
 まるでコウモリのような公明党を見ていると、私は、すさまじい出版妨害事件を惹き起こした藤原弘達著『創価学会を斬る』(日新報道)を思い出してしまいます。
 1969年秋に出たこの本で、藤原は逸早(いちはや)く、
 「創価学会・公明党が目下ねらっているものは、自民党との連立政権ではないのか」と指摘し、「もし自由民主党が過半数の議席を失なうというようなことになった場合、公明党に手をさしのべてこれとの連立によって圧倒的多数の政権を構成するならば、そのときは、日本の保守独裁体制が明らかにファシズムヘのワンステップを踏み出すときではないかと思う」
と危惧しているのです。
 慧眼(けいがん)と言うべきでしょう。

【公明党が「成長」したと胸を張つた結果がコレか?】
 44年前に藤原は続けてこう予測しています。
 「(公明党が)自民党と連立政権を組んだとき、ちょうどナチス・ヒトラーが出た時の形と非常によく似て、自民党という政党の中にある右翼フアシズム的要素、公明党の中における宗教的ファナティックな要素、この両者の間に奇妙な癒着関係ができ、保守独裁体制を安定化する機能を果たしながら、同時にこれを強力にファッショ的傾向にもっていく起爆剤的役割として働く可能性も非常に多くもつている」
 安倍晋三はもう北朝鮮の金正恩と同じ独裁者を志向しており、アベジョンウンと呼ぶしかないと私は思っていますが、公明党はまだ、そうは見ていませんか。
 福島の公聴会では、与党推薦の参考人でさえ反対したこの法案を、公明党は危険だとは思っていないのでしょうか。
 あるいは、危険だと思っても、与党となったからには「下駄の雪」のように、どこまでも自民党についていくということですか。
 いつか、私が公明党の"変化"を非難したら、当時の市川雄一書記長が、
 「変わったのではなく、成長したと理解していただきたい」
と開き直りました。
 それで私は、
 「コウモリも成長はするだろう。しかし、成長してもコウモリはコウモリだ」
と毒づいたのですが、どこまでもコウモリ党でいくつもりですか?