矢野著書で露呈した「総体革命」の実態

―政治力を使い、行政にまで工作を……―
―矢野絢也氏が自ら行なった謀略工作を告白!!一
―『月刊ペン』事件と学会への税務調査の裏側―

(『慧妙』H22.1.16)

 昨年の12月21日、矢野絢也氏が、池田大作の人間像、および、池田大作と公明党との関係を世に問う一書を世に出した。題して『私が愛した池田大作』。
 この本には、創価学会と公明党の関係を端的に示すエピソードが満載されているが、その中でも特に象徴的な2つの事柄に焦点を当ててみた。それは、昭和51年に起きた『月刊ペン』事件と、平成2年から4年にかけて行なわれた、国税庁による創価学会に対する税務調査である。


【『月刊ペン』事件では警察に"裏工作"】
―名誉毀損ではありえない逮捕劇―
 『月刊ペン』事件というのは、同誌が昭和51年1月号より連載を開始した「崩壊する創価学会」と題する特集記事において、池田大作の女性スキャンダルを取り上げたことに対し、創価学会が、同誌および同誌編集長・隈部大蔵氏を刑事告訴したもの。
 創価学会の告訴を受理した警視庁捜査4課は、5月21日に隈部氏を逮捕。以降、隈部氏は、じつに25日間にもわたって勾留されたあげく、刑事事件の被告として法廷に立たされることになったのである。
 矢野氏はその経緯を、次のように記している。
●学会中枢としては、実質審理に入ってしまって証人問題でこちらが圧倒的に不利になる前に、示談でまとめなければならない。そのためには、先方を精神的に揺さぶっておく必要がある。いっそ、隈部氏を逮捕させてしまおう、という話になった。北条氏も「わかった。示談になるよう、隈部を追い込もう」と言っていた。それが公明党中枢の総力をかけての隈部氏逮捕工作につながっていく。
 名誉毀損(めいよきそん)容疑で雑誌の編集長を逮捕するなど、前代未聞である。だが、創価学会・公明党は、警察とは従来から太いパイプを築いていた。
 警視庁の予算と人事を握る都議会で、公明党はキャスティングボートを握っている。一方、学会も警察権力を味方にするうまみを知り尽くしている。警察と学会の利害は一致し、互いに親交を深める交流を心がけてきた。
 特に警察と関係の深かっだのが竹入氏である。やはり裏で働きかけてくれたのだろう。竹入氏のパイプが働かなければ、あそこまでうまくいったはずがない。都議会公明党の首脳や、竹入氏の腹心である衆院の大野潔氏が、熱心に動いた。
 「池田先生をお守りするためだ。協力してくれ」
 私も警察首脳に頼(たの)んで回った。
 かくして5月21日、隈部氏は取り調べの後に逮捕された。6月14日までの25日間、長期勾留の憂き目にあわされた。池田氏を守る、という一念に突き動かされてのこととはいえ、本当にひどいことをしたものである。
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学会批判者を屈服させるべく、公明党を使って警察を動かし、批判者を逮捕・勾留させる―。これは、他でもない、事件の当事者、それも警察への工作を行なった張本人による、衝撃の告白である。


【税務調査では国税庁幹部に執拗な交渉】
―絶対に触れられたくない"聖域"を死守―
 次に、平成2年から4年にかけて、創価学会は国税庁の税務調査を受ける。
 この時、矢野氏は創価学会から国税庁との交渉役を命じられ、かつ、国税庁に対してどうしても譲れない6項目にわたる条件を、八尋頼雄から示された。その6つの条件とは
@宗教法人の公益事業会計部門には絶対立ち入らせないこと
A会員の"財務"における大口献金者のリストを要求してくるだろうが、絶対に撥(は)ねつけること
B財産目録を提出しないこと
C池田氏の秘書集団がいる第一庶務には調査を入れさせないこと
D池田氏の『公私混同問題』についても絶対立ち入らせないこと
E学会所有の美術品には触れさせないこと
だったという。
 この条件を死守するため、必死になって国税庁幹部にかけ合った矢野氏は、その交渉の模様を
●国税庁長官や局長クラスに、アポイントを取ったうえで会いに行った。先方は、
 「おやおや、矢野先生のお出ましですか」
などとトボケている。
 「実は学会に国税調査が入っている。私も学会から泣きつかれて、困っている」
 暗に手心を要求した。
 「いやその件ですか。しかしすでに現場が動き出してますからねえ。今さら、私らから何か言っても、どうしようもありますまい」
 「いや、だから……そこをなんとか」
 向こうだって簡単に、ハイそうですか、と呑(の)んでくれるわけはない。こちらも覚悟の上である。腹を据(す)えて交渉にかかった
●私は何度、国税に通ったことだろうか。国税は頑強だった。こちらも、例の6項目を一歩も譲ることはできない
●八尋氏から示された「絶対触らせない6項目」と池田氏がらみの核心部分は、ギリギリのところで先送りされた。私もなんとか、自分の役割を果たすことができた
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などと記している。
 しかして矢野氏は、自身が国税庁との交渉役に選ばれた理由について、次のように記している。
●書記長をやっていると、現場の官僚と接する機会も多い。国会での法案審議促進のためにも、よく頼み事にやってくる。こちらの資科要求に対し、説明にやってくるのも彼らである。
 当時の大蔵省関連で一番大きかったのは、予算案関係であった。予算委員会が紛糾したり、審議が止まってしまったりすると、日程の件で相談が持ちかけられる。公明党がキャスティングボートを握る場面も多かったから、我々がどう動くかで予算成立の日程も変動する。そこで日程調整において、彼らの便宜を図ってやるようなこともあった。(中略)今思えば、野党だったということも幸いしていた。与党であれば幹事長クラスに説明に来るのは、先方も局長級になる。20年も経(た)てばもうとっくに退職している。だが野党だったから、やってくるのは若い官僚だった。20年経って、ちょうど幹部に出世していた。
 そんなわけで、大蔵省の幹部級、国税庁のトップクラスにも旧知の人物がたくさんいた。「なんとか手心を」とお願いしに行くのに、人脈の多い私は適役ということなのだろう。


【政・官・マスコミに潜入した池田門下生】
―油断は禁物!天下盗(と)りは潰(つい)えていない―
 この2つの事例から見えてくるもの、それは、創価学会による天下盗りの恐怖である。
 そもそも、公明党は創価学会の政治部を独立させたものである。
 すなわち、池田大作の天下盗りの野望を実現するために作られた政党であり、昭和45年5月3日の、池田大作による政教分離宣言後も、その基本体質は変わっていなかったことが、今回改めて確認できたわけだ。
 さらに、公明党による、警察・国税庁などの行政機構掌握(しょうあく)の手法と実態が明かされたことで、池田大作の天下取り構想は、夢物語どころか、実現の一歩手前の状況にあったことが明確になったといえよう。
 加えて、政・官・マスコミに浸透した池田門下生の存在がある。これについて、矢野氏は次のように指摘している。
●天才的オルガナイザーとしての池田氏の実績で、特に瞠目(どうもく)すべきは教育機関を創設したことだろう。創価小学校、創価中学校、創価高校、創価大学……。物心つく前から学会の教えを叩き込む。親の宗教を子供も信じるというレベルの話ではない。池田氏との師弟意識を徹底的に教育されるのだ。2世、3世の純粋培養。つまり、池田心酔者の拡大再生産である。
 そうして育成された人材が、社会に出ていく。司法試験、国家公務員試験……。様々な狭き門を突破して、各界の中枢に進出していく。彼らはすでに中堅どころにまで出世している。もちろん例外もあるが、彼らの価値観の第一は、基本的に「池田先生のため」である。
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 昨年夏の衆院選の大敗北によって、公明党が政権与党の座から滑り落ちたことにより、池田の天下盗りは今、足踏み状態となった。
 だが、本年夏の参院選において、もし公明党を勝たせてしまうようなことがあれば、政界のバランスが再度崩れ、池田の天下盗り構想が蠢(うごめ)き始めるに違いない。
 そのようなことにならぬよう、我々は声を大にして、創価学会・公明党の実像と、池田の天下盗り構想の危険性を、広く世に問うていこうではないか。


▲『月刊ペン』事件で東京地裁に入廷する池田大作と国税庁<写真提供=共同通信社>=『月刊ペン』事件に国税庁の税務調査―この2つから、池田大作の天下盗りの実態が透けて見える