海外広布
アルゼンチン広布

アルゼンチン地図
面積:278万ku(日本の約7.5倍)
人口:4076万人
住民:欧州系(スペイン、イタリア)97%、先住民系3%
言語:スペイン語


【国土世間】
 広大な国土は、南米ではブラジルに次ぐ広さで、世界でも8番目の面積を持つ。アンデス山脈、パンパと呼ばれる大草原、北東部の熱帯雨林やイグアス滝が有名である。
 農牧業や食品加工業が主な産業で、現在は、新たな産業の育成や法制度の整備により経済成長の維持をめざす。  首都ブエノスアイレスは建国以来政治経済の中心であり、南米を代表する都市でもある。(『大白法』H25.9.16)


【アルゼンチン布教所】
1998(平成10)年にブエノスアイレスに開所し、アルゼンチン国内をはじめ、ペルー、チリ、ウルグアイ、ボリビア、パラグアイの南米スペイン語圏を管轄する拠点である。(『大白法』H25.9.16)


南米スペイン語圏の発展へ 弘法の念強く/『大白法』H25.9.16

南米(ブラジル・アルゼンチン)裁判報告対談/『大白法』H22.5.16

アルゼンチン政府が、日蓮正宗の宗教活動を正式に認める決定/『大日蓮』H21.10

毎週我が家で折伏座談会を開催/『大白法』H20.7.16

アルゼンチン布教所創立十周年記念法要並びに南米スペイン語圏地涌倍増大結集推進決起大会/『大白法』H20.5.16

「仏法入門セミナー」に新来者120人/『大白法』H17.6.16

立宗750年慶祝登山の体験/『大白法』H15.2.16


アルゼンチン政府が、日蓮正宗の宗教活動を正式に認める決定

一宗教登録抹消処分を撤回一
(宗務広報No.1119 H21.9.7宗務院/『大日蓮』H21.10)

 今般、アルゼンチン政府と同国裁判所により、正式に、同国内における日蓮正宗の宗教活動を認める決定が下されました。
 アルゼンチンでは、カトリック以外の宗派は、全て外務省宗教局に登録することが義務づけられ、日蓮正宗アルゼンチンもブエノスアイレス市内に布教所を設けて、同国法の定めにしたがい活動してきました。
 しかし、同国に赴任した担当教師の発言等をめぐって現地で問題が深刻化し、1998年7月、日蓮正宗アルゼンチンは、宗教局の登録が抹消されてしまいました。そこで、直ちに裁判所へ登録抹消の取消しを求める訴訟を提起するとともに、効力停止を求める仮処分を申請し、その仮処分決定に基づき、これまで宗教活動が維持されてきました。
 宗教登録抹消処分は、アルゼンチン大統領の認可を得たものだけに、これを取消すことは容易なことではなく、以来11年余の永きに亘り、関係各位の多大なる協力を得て、問題解決に向け尽カしてまいりました。
 この度、積年の功が実り、アルゼンチン政府は、日蓮正宗の正しい姿を理解し、去る8月10日付で登録抹消処分を撤回しました。さらに、この政府決定を受けた裁判所も、同月27日、これに関する訴訟の終結を宣言し、日蓮正宗アルゼンチンは、法の定めの下、同国において堂々と宗教活動が行えることとなりました。
 本年の深い意義に鑑みれば、この時に問題が解決したことは、正義顕揚の1つの実証であり、海外広布にとっても誠に大きな意味があります。
 しかし、ここで留意すべきは、他宗教に対する真摯(しんし)な批判は、表現の自由や信教の自由という基本的人権の行使として、いかなる社会でも許容されるべきは当然ですが、他方、いたずらに誹謗中傷するものと受け止められないよう、表現を考慮し、慎むことも世界共通の認識であるということです。
 今回の一連の問題を教訓に、歴史や文化等が異なる海外での布教にあたっては、誤解が生じることのないよう細心の注意を払いつつ、しかし決して臆することなく、大勇猛心をもって、さらなる広布の推進に尽力するものです。
以上


アルゼンチン政府が日蓮正宗の宗教活動を正式に認める決定

―宗教登録抹消処分を取り消し―
(『大白法』H21.10.1)

 日蓮正宗は平成3(1991)年11月に、それまでSGIに一任していた海外広布の体制を改めて、宗門・僧侶主導の海外広布が始まり、アルゼンチンヘも僧侶が出張し、宗教法人取得のための準備を進めていました。そして、様々な障害を乗り越え、平成7(1995)年12月5日付で日蓮正宗の宗教登録の許可を得、活動を展開していました。しかし、平成9(1997)年4月に派遣された担当教師(当時)による、一国の公教で重要視される宗教家への不用意な発言が、近隣住民及び多方面の人たちからの反発にあい、宗教登録抹消処分を受けるに至りました。
 宗教登録抹消とは、宗教法人格が消失し活動をも停止させられる処分であり、新たに派遣した担当教師が布教所で法衣を着て勤行をすることさえ禁止される厳しいもので、事実上布教活動を不可能にするものです。
 さらに、事はアルゼンチンばかりではなく、他の国々への布教活動にも悪影響を及ぼすほどの深刻な事態に陥りました。
 宗門は問題解決に当たり、行政への処分不服申し立てや裁判所への処分取り消しを提訴し、仏教とそれ以外の宗教との相違を詳細に述べると共に、登録抹消の原因となった発言は個人的な謬見(びゅうけん)に過ぎず、宗門の見解とは無縁のものである旨の声明を尾林海外部長(当時)名で発表しました。また現地信徒や後任の担当教師も、近隣住民や多方面の人たちの宗門に対する誤解を解くために懸命の努力を続けてきました。
 これによって、平成11(1999)年4月28日、ブエノスアイレス裁判所より、所轄官庁による登録抹消処分の効力を停止する仮処分命令を得ることができ、現在まで、アルゼンチン布教所での宗教活動を継続してきたのであります。
 しかし、これはあくまでも仮のものであり、いつ覆(くつがえ)るか判らない不安定なものでありました。そこで、さらに本裁判でも良好な判決を得るため、所轄官庁の担当者変更を機に、ブラジルでも問題解決の実績を持つH・J・カルマン弁護士を筆頭とする弁護団を代理人とし、日蓮正宗の真実の姿とアルゼンチンでの活動内容を正しく判断してもらうよう努めてきました。
 こうした弁護団と関係各位の多年にわたる尽力が効を奏し、関係官庁は、日蓮正宗の正しい姿を理解し、当方の主張を全面的に是認して、本年8月10日、宗教登録抹消処分の取り消しを決定し、これを公表しました。
 さらにこれを受け、8月27日、ブエノスアイレス裁判所は、日蓮正宗に対する宗教登録抹消処分は無効であること、従って日蓮正宗の宗教登録及び法人格は完全に有効であることを認める旨の判決を下し、ここに宗教登録抹消問題の一切が解決したのであります。
 ただし、注意しなければならないことは、このたびの解決は、宗教登録抹消処分に至った発言をもアルゼンチン政府が受け入れたのではない、ということです。日蓮大聖人は、『太田左衛門尉殿御返事』に、
 「予が法門は四悉檀(ししつだん)を心に懸けて申すなれば、強(あなが)ちに成仏の理に違はざれば、且(しばら)く世間普通の義を用ゆべきか」(御書1222頁)
と御教示くだされています。未来広布へ新たな心で一歩を踏み出した今日、海外布教においては、特にこの御教示を心に留めなくてはなりません。
 また前御法主日顕上人猊下は、平成11年7月の夏期講習会で、
 「その国の民族、宗教、風俗、習慣というものがありますから、その国の従来のあり方を十分に理解して寛容な態度を持って化導すべきであります(趣意)」(『大白法』536号)
と仰せになり、明確に海外広布に対する心構えを御指南くださっています。
 私たちはこれらの御教示と御指南に随順し、その国が建国される縁由となった公的な宗教や歴史、文化、習慣を考慮した上で布教を行わなければ、再び今回のような問題を引き起こすことになりかねないということを肝に銘じなくてはなりません。
 このたびのアルゼンチンでの宗教登録抹消処分を貴重な教訓として、海外における布教に際しては、他の宗教への言動に十二分に配慮し、その上で、世界広布の一層の推進に尽力する所存であります。

[画像]:アルゼンチン布教所での裁判終結の信徒説明会

[画像]:アルゼンチン布教所





「仏法入門セミナー」に新来者120人

―因習深い地元に正法広布を―
―アルゼンチン・フフイ州―

(『大白法』H17.6.16)

 アルゼンチンには、ペルー、チリ、ウルグアイ、ボリビア、パラグアイの南米スペイン語圏の信徒が所属するアルゼンチン布教所が首都ブエノスアイレスに開設されている。同国内では、首都をはじめ各地方に計250余世帯・580余名が信仰に励んでいる。
 布教所では、現在、弘教活動の一環として広く社会に門戸を開くべく「仏法入門セミナー」を毎週行っている。また布教所責任者の井尻執道御尊師は、大学等からの仏法の講義の招待を積極的に受けている。また、各地方でも「仏法入門セミナー」を行っている。
 今回紹介するクラウディオ・サイマンさんは、首都から千7百キロメートル離れたアルゼンチン最北部のフフイ州に住む、家族を含め10世帯30名の信徒の中心者として活躍している。この地域は、インカ文明とスペイン統治時代の名残りをとどめる、いわゆる因習深い土地柄であるが、昨年は、年に1度の出張御授戒の際に、フフイ州の文化会館を借りて「仏法入門セミナー」を開催し、120人もの新来者を迎えることができた。今回クラウディオさんには、その時の様子も含めて語ってもらった。
◇◇
〈Q〉仏教のことを知らない社会のなか、聞くところでは、「ブディスモ(仏教の意味)」と「ブードゥーイスモ(アフリカを起源とするブードゥー教)」の違いも判らず、発音が似ていることからそれらを混同する人が多いそうですが、そのようななか、どういった経緯と動機で入信されたのですか。
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〈クラウディオ〉 はじめは健康維持のために、友人からヨガと太極拳の先生を紹介してもらいました。その先生が仏法を信仰していて、お話を聞きました。
 そして、その先生がSGIを脱会した後、初めてフフイ州へ出張御授戒に来られた井尻御尊師から御授戒を受けました。2000年5月6日のことでした。

〈Q〉仏法に対する知識が世間の人々に全くないなか、どのような折伏活動を行っていますか。
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〈クラウディオ〉 この5年間、毎年の出張御授戒に合わせて行う折伏座談会に活動の中心を置き、より多くの新来者を迎えるためのいろいろな努力を積み重ねてきました。そして、座談会に参加された人と連絡を取り続けることで、多くの方々が御授戒を受けられるまでになりました。
 特に、昨年は、井尻御尊師の御指導のもと、今までよりも規模を拡大した「仏法入門セミナー」を、州の文化会館を借りて行いました。視聴覚機材を使って仏法の歴史や教義を説明し、また総本山の写真や布教所での活動の写真なども入口に展示しました。
 このときは新来者が120人も参加して、用意していた椅子が足りなくなるほど盛況で、驚きました。そのなかから、すでに何人もの方が昨年の布教所の御会式に参詣して御授戒を受けました。さらに今年の出張御授戒で御本尊様を御下付いただけるようお願いしている方々、御授戒を希望している方々がおります。

〈Q〉その「仏法入門セミナー」開催に当たり、どのような準備をしたのですか。
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〈クラウディオ〉地元信徒1人ひとりが、「30人以上を招待しよう」を合い言葉に、3百枚の名刺サイズの招待カードを作成し、日蓮正宗の簡略な歴史と教義を印刷したパンフレットと併せて親戚や友人、知人に配布しました。また、街頭配布用パンフレット千枚を、セミナーの5日前と2日前に市内で配布しました。さらに、A3サイズに拡大したパンフレットを5百枚用意して公共の掲示板での掲示をお願いしたり、A4サイズのものを商店の店先に貼っていただいたりしました。信徒一同が協力し合って成し遂げることができたと、皆喜んでいます。

〈Q〉折伏弘教にはどのような困難がありますか。
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〈クラウディオ〉ここフフイ州は、アルゼンチンで最も貧しい州の1つです。先祖代々の宗教への執着が深いため、仏法の話を聞こうともしません。そのような保守的な傾向からか、貧しい現状に満足して改善しようとか打開しようという気持ちさえも起こらない。これがこの地域の一般的な人たちの現状です。

〈Q〉そのようななかでも着実に弘教が実っていますが、今まで戴いた功徳の実証を教えてもらえますか。
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〈クラウディオ〉 入信以来、様々な功徳を戴き、日々成長させていただいていることを感じます。
 たとえば、ブエノスアイレスにある布教所に家族共々、度々参詣できること、さらに一昨年と昨年には御会式にも参詣できました。
 ちょうど昨年の御会式の直前に失業したのですが、御会式から帰ってみると、新しい職場からの誘いがありました。以前の職場よりも経済的に恵まれて、信心活動にも一層力を注げるようになりました。
 家族も健康で、子供たちと共に信仰でき、広宣流布のために働かせていただけて、人間として生をいただいた真の意義を感じ、感謝しています。
 布教所へは今まで以上に足を運ぶことができるようになり、また、近い将来、総本山への登山も叶いそうです。

〈Q〉では最後に、「『立正安国論』正義顕揚750年」に向かっての抱負を聞かせてください。
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〈クラウディオ〉転職の都合から隣のサルタ州に引っ越しましたが、フフイ州の同志を励まして広布の基盤を確実に築き、またサルタ州でも広宣流布のために働きたいと思います。そして、布教所での行事には欠かさず参詣できるよう、さらに「『立正安国論』正義顕揚750年」の慶祝登山に必ず登山できるよう準備していきます。

フフイ州で行われた「仏法入門セミナー」
▲フフイ州で行われた「仏法入門セミナー」





さらに6年後へ決意

−1日1日が登山への積み重ね−
(『大白法』H15.2.16)

アルゼンチン布教所 フリオ・セバスチアン・ゴメス

 私は、27歳です。今から5年前に御授戒を受けました。日本から最も遠い国、アルゼンチンに住んでいます。
 私が宗旨建立750年慶祝記念海外信徒総登山への参加を決意したのは、2000年でした。異体同心の大切さを心から理解でき、同志と共に登山へ参加しようと決意しました。その年の5月28日に、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロ市内のホテルで南米総会が開かれました。その前日には、アルゼンチンから参加する同志と共にアングラ・ドス・ヘイス布教所で唱題し、グループで心を合わせて登山することの大切さを強く感じたのです。

<登山の準備、家族と登山費用>
 私は、ラジオの公認アナウンサー、記者として仕事をしています。私がこの仕事を通じて努力している目標は2つありました。それは、アルゼンチン布教所御安置の常住御本尊様へ毎月御供養申し上げることと、登山費用を貯金することです。仏様に戴いたこのすばらしい機会を決して無駄にすることなく、毎月厳格に貯金し、決して余計なことに使わないことを自分に課しました。
 そういう自分を未入信の職場の上司や同僚までも理解してくれ、幾度となく励ましてくれました。このような決意を妨(さまた)げようとする障魔が競ったこともありましたが、幸いにも、その魔の用(はたら)きは、他の同志よりは厳しいものではなかったと思います。
 今の仕事を続けるか、それとも転職したほうがよいか、という選択を強いられることは常にあります。しかし、そのたびに、決意したことを思い返し、必ず実現するという念が涌き、一時の気の迷いを静めました。この意味から、アルゼンチン布教所責任者の井尻執道御尊師と私の家族は、いつも私を励ましてくれました。
 私の入信は母の折伏によります。母は、姉をはじめ、父をも最後には入信に導きました。当初は、その母こそ、このたびの登山を固く決意していましたが、姉の病状が思わしくなく、入信したばかりの父に、自分に代わって登山してほしいと熱望しました。そして父は、その約束に応えようと、登山の準備に勤(いそ)しみました。この父の姿が私に、決意を貫き通すことの大切さを教えてくれたのです。
 一方、姉は病気のてんかんが悪化して、叫び、怒り、たいへんになっていきましたが、それがかえって、私たちの登山への決意を堅固にし、御本尊様の前に座れるようにしてくれたのです。その間の母は、常に私たちの登山が実現するよう支援してくれました。

<登山、大石寺での日々>
 大御本尊様に御目通りしたい、という願いは、日増しに大きくふくらんでいきました。ただ、アルゼンチンの多くの同志は、国が経済破綻に陥っている影響から、今回の登山が実現できなかったのが残念です。
 総本山大石寺に到着した私たちを、多くの御僧侶方が喜びの中で出迎えてくださいました。大石寺で過ごした日々は、とても短かったのですが、まるで自分の家に帰ってきたように違和感がありませんでした。そして「南無妙法蓮華経」と唱えるとは、一生弛むことなく信心を持続していくとはどういうことなのか、理解できたように感じました。
 総本山には、仏様の教えが満ちていました。同志たちが、これほど親密に感じられたことはありませんでした。また、私の父も、単なる自分の父としてではなく、大切な同志であると感じました。
 私たちは大御本尊様に御目通りするという唯一の目的を持って登山しました。初めての御開扉のとき、大御本尊様の力強さ、尊厳さ、悠然さ、そして深い感謝の念が涌き起こりました。涙が泉のようにあふれ、井尻御尊師の御指導を思い出しました。涙で仏様を拝する目がかすまないように、唱題を途切れさせないように自分を励ましました。皆の唱題の声が1つになり、自分は何て幸福なんだろうと感じました。私の人生も苦悩も転換することができるのです。どんなことがあっても、アルゼンチンと南米の広宣流布を推進するために、仏様に身命を捧げようと決意しました。そして、次の機会には必ず家族全員で登山できるようになろう、本年のサンパウロ新寺院の落慶法要と宗旨建立750年慶祝記念南米総会に必ず参加し、さらに、2009年にも登山しようと御本尊様とお約束しました。後は、感謝の気持ちが涌き起こるばかりでした。

<忘れ得ぬ体験>
 アルゼンチン信徒を代表して、共同宣言の一部を捧読し、御法主上人猊下に各国を代表してお渡しするという任を与えていただき、登山前から、それは重大な責務であることを感じていました。
 海外信徒総会が始まる少し前、井尻御尊師から、どのように立ち上がり、歩き、舞台の階段を上り、そして、どのように御法主上人猊下にお渡しすればよいのか、さらに、どのように元の位置に帰ってくるべきかを、懇切丁寧に説明していただきました。そのときの私は、まるで赤ちゃんのようでした。指導役の御僧侶の方々からは、完壁にできるように教えていただき、期待していただきました。それにお応えできるよう、失敗しないことに神経を傾けました。緊張はしませんでした。
 いよいよ本番、御法主上人猊下への尊崇の念が高まり、心臓の鼓動が激しくなりました。しかし、決意を固めながら一歩一歩を踏みしめ、御法主上人猊下の御前に進みました。恐れ多くて御尊顔を拝することを控えました。これは、個人的な役割ではなく全信徒の代表としてお渡しさせていただくのだとの気持ちで、喜びと感動があふれました。涙もあふれました。大切な任を無事に果たし終え、最後は安堵の笑みがこぼれました。
 私たちは、30数時間の旅路で、お互いの大切さ、尊さを分かち合うことができました。総本山に向かっていくことが仏道修行なのです。南無妙法蓮華経が心から涌き出しました。全員が1つの家族になれました。アルゼンチン法華講の一員としての誇りを感じました。また今回登山できなかった同志を代表している責務に思いを馳せました。この登山で、参加者一同が人間的にも、信心の上からも成長できたと思います。多くのことも学びました。登山を阻(はば)む魔を乗り越えていくことも体得しました。出発のときよりも一層団結心を固め、アルゼンチンに帰ってきました。これからは、登山で培った信力・行力で心に潜む障魔を対治し、懈怠(けたい)の心を乗り越えていきます。大御本尊様へのお誓いを果たしていきます。アルゼンチン布教所をお護りします。
 さらに、今年からは、青年の責任者として、御法主上人猊下の御指南に信伏随従(しんぷくずいじゅう)申し上げ、井尻御尊師の御指導のもと、同志を励ましていきたいと思います。
 すばらしい登山ができたことに心から感謝しています。大御本尊様、御法主上人猊下に感謝申し上げます。そして、全御僧侶方、井尻御尊師、さらに、お世話してくださった日本の法華講員の皆様、全世界からの登山者の同志、アルゼンチン、ペルー、ウルグアイ、チリの法華講員の皆様、登山を支援してくれた母、一緒に登山した父、そして、姉へ、感謝します。もし彼女が病気でなかったら、恐らく私は、この大聖人様の仏法へ巡り合うことはなかったでしょう。本当にありがとうこざいました。